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サッカー元日本代表の鈴木啓太氏が創業した「AuB」、約3億円を調達してフードテック分野に参入

サッカー元日本代表の鈴木啓太氏が創業した「AuB」、約3億円を調達してフードテック分野に参入

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サッカー元日本代表の鈴木啓太氏が創業した、アスリートの腸内環境の解析を手掛けるスタートアップ「AuB(オーブ)(株)」は、銀行系ベンチャーキャピタルや大手製薬会社などを引受先とする第三者割当増資で総額約 3 億円を調達した。同社は現在、フードテック分野への新規参入を計画しているほか、腸内細菌の特許ビジネスを展開するための新菌の発見に注力している。調達した資金をこれらの事業に充て、新たな収益モデルを開拓し、研究開発段階から事業化に向けて動きを加速する。

この度、三菱UFJキャピタル(株)と大正製薬(株)、個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施し、累計約 3 億円を調達。同社はこれまでも、クラウドファンディングや個人投資家から約1.2 億円の出資を受けてきた。今回のように、投資会社や大手メーカーから出資を得るのは、初めてという。

出資比率は非公開。調達した資金は主に、「研究データを生かしたフードテック分野への参入」と「新菌発見による特許ビジネスの本格展開」に伴う、研究開発費や人件費に充てる。フードテック関連では近秋にも、第一弾の商品(サプリメント)を発売する。特許ビジネスは、東京・日本橋のシェアラボ(共同の実験施設)に研究拠点を開設(2019.6)。同社研究員が常駐し、“生の便”から“生きている腸内細菌”を取り出し、培養して、従来にない機能をもつ菌を発見する研究を開始、“腸内細菌の特許ビジネス”に乗り出す。これまで通りの研究活動も継続する。収集するアスリートの便から DNA を採取し、その人の腸内に棲む腸内細菌の数や種類、その割合を自社で解析しながら、大学など各研究機関と共同で、身体への関与のメカニズムを解明していくという。

大正製薬とは同資本提携を機に、業務でも提携する。腸内で有用な働きをする細菌「プロバイオティクス」(※)の独自素材を使った商品や、アスリートの腸内細菌の研究データを活用した商品など、開発分野で協業していく考え。同件は同社にとって、事業開発段階にあたる「シリーズ A」と呼ぶ初期の資金調達。今後も研究実績を積み重ねながら、各分野の企業等と資本、業務提携を進める考えだ。

※:乳酸菌やビフィズス菌など、十分な量をとると腸内で有用な働きをする細菌のこと

AuB について

AuB は2015年10月創業の、アスリートの腸内細菌を研究する企業。代表取締役の鈴木啓太氏は、サッカーJリーグチームである浦和レッドダイヤモンズのプロ選手(2000.1-2016.1)で、日本代表(A代表)でも活躍した、元トップアスリート。鈴木氏は、栄養士の母親に幼少の頃から「人間は腸が一番大事」「便を見なさい」と言われ、育った。腸内環境の重要性をいち早く認識し、現役時代からお腹でコンディショニングを整えてきたという。「自分の感覚を科学的に解明して、アスリートや一般の方の健康に寄与したい」と、浦和レッズ退団(2016.1)に先駆けて、会社を設立。

スポーツ界の人脈を生かして集めた便の数は現在、選手500 人分を超え、その検体数は 1000 を突破している。選手は、オリンピックの金メダリストをはじめ、海外の一流クラブやJリーグに所属するサッカー選手、プロ野球選手など、超のつくトップアスリートが多数並ぶ。競技はサッカーやラグビー、陸上など、27 種に及ぶ。収集した便から DNA を採取し、腸内細菌の集団(腸内フローラ)を解析して、そのデータをもとに各大学など研究機関と、腸内フローラがヒトにもたらす効果を解明する研究を進めている。

▲共同研究する香川大学には現在、その500人以上の便から採取したDNAを保存する専用の冷凍庫も完備

同社が最初に取り組んだテーマは、そもそも「アスリートと一般人の腸内環境は異なるのか」。設立から1 年で集めた約300人のアスリートの便を解析したところ、「アスリートは特徴的な腸内環境である」ことが分かり、そのことを、創立から 90 年以上の歴史を誇る日本農芸化学会の学会にて発表(2018.3)する。同年9月には「高齢者のアスリートと一般高齢者の腸内環境の比較」に関する研究を、日本体力医学会で発表。アスリート(マスターズ陸上の選手)の方が一般より、感染症リスクが低い(病原菌を含む種類の菌が少ない=病原菌の発現率が低い)傾向等を発表する。また同年10月、日本農芸化学会の学会で、アスリートは「酪酸菌」が優位に多い特長があることを発表。「酪酸菌」は、免疫機能を整えたり、腸の動きを活発にしたりする働きがある菌で、一般の人の約2倍あることを突き止めている。アスリートに特化した腸内環境のデータや知見は、食品メーカーからも注目される。各社の持つ商品が、アスリートの腸内環境にどのような影響を及ぼすのかの研究を、味噌・醸造品のハナマルキや和菓子の五穀屋、キノコ生産最大手のホクトと行っているという。

研究活動を通じて、アスリートの腸内を覗くだけで、その人の競技を特定できるまで、腸内環境は分類・パターン化できることがわかってきた。2019年2月に、腸内細菌の種類や数、構成のデータを機械学習するAIシステムを開発。このシステムを使うと、保有検体数の多いサッカーとラグビー、陸上(長距離)に限っては、データを読み込むと 92%の確立で競技を判別できるまで、競技ごとの腸内環境の特徴分析が進んでいる。今後は残りの8%の選手にも注目。これらの選手は、当事者の競技軸から外れた腸内環境になっている可能性が高く、腸内環境の改善を意識した同社コンサルティングで、選手のパフォーマンス向上に寄与できる可能性があると睨んでいるという。

現在力を入れているのが、「新菌の発見」と「フードテック事業への参入」。2019年6月、アスリートが訪問しやすい東京・日本橋に、研究拠点(シェアラボ)を設ける。専門家が常駐し、アスリートの便から“生きている腸内細菌”を取り出し、培養して、従来にない機能をもつ菌を発見する研究を開始、“腸内細菌の特許ビジネス”に乗り出すという。

これまでは主に、便を香川大学に郵送し、生きた菌のいない“死んだ便”から DNA を採取して解析してきた。データは十分にとれるが、腸内細菌の培養は出来なかった。今後はこれまでのDNA解析で特徴的だった被験者に協力を仰ぎ、日本橋を拠点に、“生のデータ”から新菌を探す研究を強化。そしてもう一つが、培った腸内細菌のデータをもとにした、腸内環境を整えるフードテック商品の発売。4年間かけて 1000検体以上のアスリートのデータから、アスリート特有の腸内フローラを発見していた。調達した資金を人材確保や商品開発、販促に充て、攻めに打って出るという。

資金調達に関する代表取締役 鈴木啓太氏のコメント

「2000 年代中ごろに、高速でゲノム情報を読み取る遺伝子解析装置(次世代シーケンサー)が米国で開発され、プロバイオティクスは今、盛んに効果が研究されています。今や『便は茶色いダイヤ』と注目を集めています」

「その中でも当社は、アスリートに特化して研究を進めているのが大きな強みです。集めた便の数(スポーツ選手 500人・1000 検体以上)は、世界でも類をみない数と自負しています。実際に当社と同じく、アスリートの腸内細菌を研究するハーバード大学発のベンチャーが、『どうやって集めるんだ?なぜそんなに選手が協力してくれるんだ?』と、驚いた程です」

「創業から4年かけて、1000 検体以上のアスリートのデータから、アスリート特有の腸内フローラを発見することに成功しています。当社の信念は、『アスリートの腸内細菌が、人々の健康を変える』です。こうしたアスリートからの“宝のデータ”を生かして、アスリートはもちろん広く一般の方の健康に寄与していく考えです」

▲「みなさんはビジネスアスリート。良い結果を出すためにはコンディション調整が必要。食事内容に加えて、体内を通って何が起き、どう出たのかも知るべき」。代表の鈴木氏は、企業向けの講演も行う。

※関連リンク:プレスリリース

(eiicon編集部)

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