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想いを事業化し、「はたらく」をアップデートする――パーソルが始動させる新規事業創出プログラム「Drit」とは?

想いを事業化し、「はたらく」をアップデートする――パーソルが始動させる新規事業創出プログラム「Drit」とは?

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時代の変化により、「はたらく」の姿は変わっていく。特に現在、価値観の多様化やテクノロジーの進化、ビジネス環境の激変などにより、これまでの「はたらく」をアップデートする必要が高まっている。――では、新しい「はたらく」の在り方とは何か、社会にどんな仕組みがあればいいのだろうか、どんなはたらき方や生き方をしたいのか。

そんな社会課題を捉え、日本中の「はたらく」をアップデートする想いを事業化していくために、総合人材サービスのパーソルグループでは、これまでに社内で実施していた新規事業起案プログラムを社外に開放。多様なアイデアを募ることとした(応募締切10/31)。

本格的な事業化を見据え、国内外70社超のパーソルグループのリソース、事業化に支援を持つ外部有識者のメンタリングなど、充実したインキュベーション体制を用意している。

PERSOL INCUBATION PROGRAM「Drit(ドリット)」と名付けられたプログラムについて、責任者であるパーソルイノベーションの森谷氏、そしてメンターとして参画するサムライインキュベートの長野氏に聞いた。

パーソルイノベーション株式会社 インキュベーション推進室長 森谷元氏

2014年にインテリジェンス(現:パーソルキャリア)に新卒入社。コンサルタントとして新人賞を獲得する活躍をしながら、1年目から社内ビジネスコンテストのファイナリストとなる。その後、新規事業部門に異動し、新サービス創出に積極的に携わる。2016年、アマゾンジャパンに転職し、新規事業の立ち上げを任される。事業成長に貢献し、年間MVPに輝く。2018年、新規事業創出を本気で行うためにパーソルホールディングス イノベーション推進本部へ。新規事業起案プログラム「Drit」の運営責任者。

株式会社サムライインキュベート 共同経営パートナー Chief Strategy Officer 長野英章氏

2010年グルーポン・ジャパンへ入社。ナショナルクライアントチームの立ち上げを行う。2011年Rocket Internetの旅行系C2C事業Wimduの日本創業チームの立ち上げマネージャーとして、事業開発からPRまでを実施。同年、ダイマーズラボを創業。複数サービスを立ち上げ、VCや上場企業の創業者等から資金調達を実施。2015年、オプトホールディングとダイマーズラボの共同で、新規事業の量産に特化した新会社「オプトインキュベート」を設立し、代表取締役COO就任。2017年、株式会社サムライインキュベートに共同経営パートナー Chief Strategy Officerとして参画。独自のフレームワークを開発し、スタートアップ支援、大企業のオープンイノベーション支援、新規事業の立ち上げ伴走支援等に従事している。

数々の事業を生み出してきた社内プログラムを外部開放

――まずは森谷さんに伺います。今回、総合人材サービスを提供するパーソルが 「Drit」というインキュベーションプログラムを始動させる背景について聞かせてください。

パーソル・森谷氏 : いま、「人生100年時代」「労働人口減少」「働き方改革」「テクノロジーの変化によるキャリアの変化」といった言葉を至る所で耳にします。よく見てみると、それらの言葉は全部「はたらく」の問題に関わっているんです。しかし、グローバルで見ると、日本ではHRの役割は大きいようでまだ小さい。できることが、まだたくさんあるのです。

では、そうした問題をパーソルだけで実行していく時代かというと、そうではありません。私たちが音頭を取り、社内・社外に関わらずみんなで「はたらく」の観点から日本を良くしていく取り組みを進めていく必要があります。

パーソルグループは、これまでグループ内向けに新規事業起案プログラムを運用してきました。オープンイノベーションプラットフォームのeiiconをはじめ、そこから実現した事業が複数あります。それらのノウハウを社外にも公開し、想いの強い人を集めて、一緒に事業化を目指していこうと考えました。――それが、「Drit」です。

――このプログラムは、法人やスタートアップではなく、個人が対象なのですね。 

パーソル・森谷氏 : 「人生100年時代、これからどう働いていこう」とか、「テクノロジーの発展に伴い、キャリアをいかにアップデートすべきか」など、悩んでいる人が沢山います。そうした個人の感じる「はたらく」課題や、そこから生じた「想い」を軸に、多彩なアイデアを歓迎します。「はたらく」の課題を考える大きな機会にしたいと考えているため、個人であれば年齢や国籍などには一切条件を設けていません。

――「Drit」というプログラム名の由来は?

パーソル・森谷氏 : 新規事業を創出する上で、最も大切なのは「情熱」と「想い」だと考えています。そこで、「Driven(突き動かされる)」と「Grit(情熱・やり抜く力)」から、「Drit」と名付けました。このプログラムで、絶対事業化につなげようという意志を込めています。私自身、想いに突き動かされてこのプログラムを起案し、絶対にやり抜く情熱を持って取り組んでいます。

――長野さんが、「Drit」にメンターとして参画を決めた背景を聞かせていただけますでしょうか。

サムライ・長野氏 : 森谷さんの「想い」に賛同したからです。もちろん、ずっと社内でブラッシュアップしながら運営されていたプログラムがベースにある分、よく設計されており、プロセスもしっかりとしています。しかし、それ以上に、プロジェクトの中心にいる森谷さんの熱量と推進力がすごい。僕のようにVCや伴走業をする中で幸せを感じる時って、すごい情熱を持っている人と一緒に走れた時なんですよ。

その点で、このプログラムにはVCでもコンサルでも会えない、ものすごく独特な情熱を持っている面白い人たちが集まりそうだと感じました。それが一番の参画理由ですね。

「はたらく」に対する課題感や想いから、事業化につなげたい

――「Drit」のメインコンセプトは、”そのアイデアで、はたらくをアップデート”となっています。そこで続いては、今「はたらく」に関してたとえばどんな課題があるのか。「はたらく」の現状と課題認識についてお二人が感じていることをお聞かせください。

サムライ・長野氏 : 色んな企業を見ていて思うのは、とにかく働いている人がかわいそうだな、ということです。日本は先進国の中でも生産性が最低レベルだと言われていますが、特に駆け出しの若手は、本当に時間がないですよね。忙しくて自分に向き合う時間がなく、文字通り「心を亡くした」状態になっています。

生産性を引き上げれば1日の中での可処分時間が増え、初めて自分に向き合ったり、自己投資をしたりできます。では、単に時間を作ればいいのかというと、ここにも課題があります。時間ができたとしても、自己投資ができる教育の場が限られているんですよ。たとえばエンジニアの場合はオンラインの授業やスクールなど、学びやスキルアップの場が充実しています。しかし、ビジネスパーソン全般としてみると、MBAくらいしかありませんよね。これは非常にハードルが高いです。自己投資としての教育の分野は、もっと可能性があると思います。

パーソル・森谷氏 : リカレント教育も最近話題にはなっていますが、日本は個人に教育投資をしないんですよ。社会人になった後、教育機関に入って学び直しをする人は非常に少ないのです。その背景には様々な課題が絡み合っていますが、1つ大きなことは終身雇用や年功序列といった日本型雇用システムです。

これまで日本企業では従業員のスキルアップやキャリアアップの機会を、企業が決めてきました。長期雇用を前提として「君は営業部に配属、その次は経理部、階層別研修を受けてね」と、その通りにやっていけば安泰でした。つまり、自分のキャリアや自分のスキルを、自分の意志で決めてこなかったんです。

しかし、今まさに時代が変わりつつあるじゃないですか。個人の力が強くなり、自分で決められるような世の中になって、時間ができたとしても、何を学ぶべきか分からない。キャリアをどうしていいのか分からない、という人が増えてくると思うんです。だったら、その悩みに応えるようなサービスがあってもいいですよね。それを、個人発想で事業化していくことを、このプログラムでは重視しています。現場で感じる「はたらく」課題、イシューや想いを軸に、色んなアイデアを出していただきたいです。

HR企業ならではの「人づくり」のナレッジ、事業検証費用など、多彩なメリット

――「Drit」は単なる個人のアイデア出しではなく本格的な事業化のために設計されており、予算もしっかり確保されていますね。メンター陣も魅力的な方ばかり です。強い想いを持つ個人にとって、非常に興味深いプログラムだと思いますが、参加する具体的なメリットを聞かせてください。

パーソル・森谷氏 : ひとつは、パーソルグループのリソースです。HR領域のプロフェッショナルとして、研修や人づくりのノウハウを、このプログラムにも潤沢に組み入れています。

そして、世の中にメンタリングやワークショップを設けているプログラムは沢山ありますが、「Drit」で特徴的なのは事業検証の予算を確保していること。2次審査通過者は、最終審査までに事業検証を行いますが、ここで50万円の事業検証費を提供します。――つまり、プロトタイプをつくり、実際に顧客にヒアリングを行うことができるのです。検証においては、当然パーソルグループの顧客リソースを活用することが可能です。パーソルグループは国内外70社以上、あらゆる業界にリーチできます。

サムライ・長野氏 : 僕はそこに、プログラム主催者としての並々ならぬ情熱と覚悟を感じます。事業検証予算を事前に確保するというのは、一見簡単そうですが、これまで数々の大企業の支援をした経験から言うと、非常に難しいですよね。しかも確保だけでなく、事前に「出しますよ」と明言できるプログラムはほとんどありません。

なぜなら、事業検証ってどうなるか分からないじゃないですか。「こういう用途に使われたらどうするのか」「経理処理をどうするか」など、様々な方向から突っ込まれるんですよ。それを全部クリアしていることがすごいと思います。参加者にとって言い訳ができないくらい、あらゆるものが整っているプログラムです。

――事業検証費用の確保において、経営をどう説得したのですか?

パーソル・森谷氏 : 経営陣に問う言葉はただひとつ、「本当に新規事業をパーソルでやっていきたいのですか?」です。中途半端なことをするつもりはなく、やるなら日本で一番いいプログラムにしたいんですよ。そこで尻込みするような中途半端な想いしか持てないのであれば、やらない方がいい、ということを話し、覚悟を経営陣に問いました。その結果、賞金も事業検証費もしっかりと確保するということも含め、経営の総意で強い意志を持って進めることになりました。

――プログラム名「Drit」に込められている想い・情熱が、至る所に込められて実現されたプログラムなのですね。

パーソル・森谷氏 : だからこそ参加することによって、新規事業創出の“お作法”を身に付けるというより、“マインド”を引き上げられるプログラムだと思います。参加者が、プログラムを通してスキルや知識を高めることは当然ながら、自分たちの在り方や「らしさ」を醸成できるようにしたいです。

サムライ・長野氏 : このプログラムは、自分に徹底的に向き合うプログラムだと思うんです。個人で参加することで、とことん自分と対話する必要がある。何をするにせよ、最初の主語は絶対に「自分」じゃないですか。「自分はこうしたい」「自分がこうありたい」「自分はこういう課題を解決したい」というところから始まる。それってすごく盛り上がりますよね。

新規事業を成功に導く3つのキーワード、「顧客」「検証」「革新」

――これまでに様々な立場から新規事業に携わってきた長野さん にお聞きします。新規事業創出において外せないポイントとは何でしょうか?

サムライ・長野氏 : 3つあります。まずは、「主語を顧客に」です。さっき最初の主語は「自分」だと言いましたが、想いから発生したアイデアを実際に事業化していくには、主語を「自分」から「顧客」に一気に変えることが必要です。それこそプログラムのday1から「自分がやりたい」を脱却し、「顧客が欲しい」と思えるものにフォーカスしていかねばなりません。

――徐々に視点を変えていくのではなく、一気に変えることが重要なのでしょうか。

サムライ・長野氏 : 顧客を主語にできなければ、事業の解像度は上がっていかず、「やっぱり自分はこうしたい」となってしまいます。それでうまくいくケースを僕はあまり知りません。

もう少し掘り下げると、「顧客」しか真実を持っていないんですよ。顧客が「イエス」と言わなければ、事業は成功しません。よく事業に詳しい識者に「ニーズあると思いますか?」と尋ねる人がいますが、それで正解は得られません。ニーズはあくまで顧客が持っているものですから、識者に聞くのはニーズを拾うメソッドにすべきです。

あと、よく「インパクト」というと、大きい事業を創ろうとしがちです。もちろんそれも大切ですが、いきなり100万人から愛されようとすると、うまくいきません。どんな世界的なアーティストも、最初は小さいライブハウスから始まるじゃないですか。ですから、100万人の前に、まず1人のコアな顧客にめちゃくちゃインパクトを与えることを考えてください。そのためにも、顧客を主語にして、顧客の声に耳を傾けることが重要です。

――なるほど。それでは次の2つ目のポイントは?

サムライ・長野氏 : 2つ目は「検討より検証」です。前に進まない人は検討ばかりしています。検討は一生できますが、検証は一瞬で終わりますよね。時間のない中で圧倒的に事業の解像度を上げていくために、検証にすぐ取り掛かってください。今回のプログラムでは、事業検証費用が支給されますから、それを最大限活用しない手はありません。

これまで僕は数々の起業家と接してきましたが、彼らの目の色が明らかに変わる瞬間があるんですよ。それは机上で議論をしている時ではなく、検証結果を目の当たりにした時です。検証の結果、顧客にボコボコに言われて「これじゃダメか」となった時、そして仮説が合っていて「これ、いけるかも」となった時。その瞬間の目って、忘れられないんですよ。今回も、そういう目の色が変わる瞬間を楽しみにしています。

3つ目は、どうせやるなら「改善より革新」。ほんの少し改善するよりも、大きく変えていきましょう。たとえば、MBA取得にかかる費用が200万円だったところを195万円にしても、あまりインパクトはないですよね。でも、5万円で同じクオリティが担保できるのだとしたら、事業機会は大きく広がります。ですから、革新を目指しましょう。――「Drit」は、それができるプログラムです。視座が上がる仕掛けもあり、メンターからテクニックも含めて学ぶことができる内容だと思います。

――長野さん、新規事業創出の3つのポイント、ありがとうございました。これらを参考にし、「Drit」で新しいビジネスの立ち上げに挑戦してほしいですね。それでは最後に森谷さん、参加を検討している方々にメッセージをお願いします。

パーソル・森谷氏 : 率直に言うと、このプログラムを通して「はたらく」の当たり前を変えたいんですよ。当たり前って、時代によってどんどん変わっていきますよね。以前は当たり前だった年功序列や終身雇用は当たり前ではなくなり、これから給料は右肩上がりではなくなり、転職も一般的になります。個人が個々の考え方に基づいて、働き方や生き方を選択する時代になっていくのです。

そうなった時の、新しい当たり前を、みなさんと一緒につくっていきたいと思っています。ぜひ、当たり前を変える気概のある方、今の当たり前に疑問を持っている方に、どんどん参加いただきたいですね。

取材後記

仕事とは、生活を支え、人生と深く関わるものだ。だからこそ、課題は根深い。そして、社会における「はたらく」の仕組みや考えもアップデートしていく必要がある。「こんな雇用・就業の在り方を実現したい」「なぜこういったことができないのか」と強い想いや熱意が湧いているが、ぶつける場がないという人もいるのではないだろうか。ぜひ、「はたらく」を取り巻く社会課題をとらえ、そして熱意と想いを携えて応募して欲しい。

「Drit」に関する詳細情報は以下をご覧ください。

(編集:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:古林洋平)

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