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サッカー元日本代表・鈴木氏のAuB――アスリートの腸内研究からサプリを開発、フードテック事業へ本格参入

サッカー元日本代表・鈴木氏のAuB――アスリートの腸内研究からサプリを開発、フードテック事業へ本格参入

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人の健康や精神的課題を解決するために、アスリートの腸内細菌に着目して製品を開発したフードテックのスタートアップがある。それがAuB(オーブ)株式会社だ。――先日、eiicon labでもお伝えしたように、同社は2019年9月 に三菱UFJキャピタルと大正製薬、個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施し、累計約3億円を調達している。

AuBは、2015年10月の創業から4年かけて、オリンピックの金メダリストを始めとする500人(1000検体)以上のアスリートの腸内細菌やその群れである腸内細菌叢(腸内フローラ)を研究。蓄積した膨大な研究データを武器に、研究開発段階から事業化へと動き出すという。

その第一弾として、発売するのは29種類の菌を配合した独自の「アスリート菌ミックス」をベースとしたサプリメント「AuB BASE(オーブ ベース)」だ。今年10月〜11月にMakuakeで販売を開始するほか、12月からは自社ECサイトでの販売を予定している。

――eiiconでは、同社が10月2日に開催した「新商品・事業戦略・研究成果 発表会」を取材。その内容についてレポートしていく。

健康を保つには腸内環境が重要

AuBを立ち上げたのは、サッカーの元日本代表である鈴木啓太氏。鈴木氏は2000年から2015年までサッカー界を代表するアスリートとして活躍後、AuBを起業。「一番の財産は応援してくれる人の存在。だからこそ、その人たちの健康に繋がる何かで恩返しができればと思っていた」という熱意から事業を興した。今年で起業してから4年になる。

▲AuB代表取締役社長 鈴木啓太氏。静岡県静岡市清水区生まれ。2000年、浦和レッドダイヤモンズ入団。2015年、アスリートの腸を研究するAuB株式会社設立し、取締役として参画、2016年1月に代表取締役就任。

鈴木氏の母親は調理師の資格を持っていたこともあってか、食事を通じた体の健康を考えており、小さい頃から腸が大事だと言われていたという。「毎日うんちを見なさいと。現役時代は腸を意識することで健康を保ってきた」(鈴木氏)。そこで鈴木氏はアスリートの腸内環境に着目。これを研究することでアスリートの課題が解決できるのではと考えた。

研究のためにはサンプルが必要だが、普通に「うんちをください」といっても何のために使われるかわからないため、なかなか集まらなかった。しかしアスリートへのサポートを続けていくうちに次第に理解され、今ではオリンピックの金メダリストをはじめ、海外の一流クラブやJリーグに所属するサッカー選手、プロ野球選手など500人以上のアスリートから1000以上のサンプルの提供をうけるまでになった。そして生み出されたのが「アスリート菌ミックス」だ。

▲発表会では、AuBが発売する「アスリート菌ミックス」をベースとしたサプリメント「AuB BASE」が披露された。

AuBの事業において重要となる3つの柱は「研究」、「事業」、そして「社会貢献」となる。製品の研究を事業につなげ、その事業を社会貢献へとつなげていく。「アスリートの課題を解決していけば、一般の人への貢献もできる。後々はアスリート特有の菌も発見したい」と鈴木氏は意気込む。

そして製品をただ販売するだけではなく、コミュニティが重要だと鈴木氏は考える。そのため製品購入者を中心としたフットサル部を立ち上げることも発表された。「2020年のイベントに向かって、これからはスポーツシーンが重要となる。これまでアスリートをサポートしてきた経験を元に、次世代アスリートの育成、スポーツ界の発展となるようなコミュニティにしていきたい」と鈴木氏は語る。

人の腸内では巨大な生態系が作られている

発表会では同社取締役兼研究統括責任者の富士川凛太郎氏から研究についての概要も紹介された。

▲AuB 取締役兼研究統括責任者 富士川凛太郎氏

人間の腸内には500兆個の微生物・腸内細菌が生きており、その重さは体重の1〜1.5kgとなることはご存じだろうか。銀河系の星の数は2000億個と言われているが、その500倍もの数の細菌がおなかの中にいることになる。「人間の腸内には、細菌たちの巨大な生態系が作られている」と富士川氏は語る。

腸内には1000種類以上の細菌が住んでいるが、それらはビタミンやアミノ酸を作ったり、免疫能力を調整する機能を持つ。人それぞれに腸内細菌のバランスが異なり、病人と健康な人の腸内細菌を比較することで、さまざまな発見がなされてきたのがここ10年間だ。

同社ではこれを一歩進めてアスリートに着目。アスリートには「短鎖脂肪酸」を作る菌が多いほか、腸内細菌の多様性が高いことがわかってきた。短鎖脂肪酸とは腸内細菌によって作られる酢酸、プロピオン酸、酪酸などのことを言う。

「アスリートには酪酸菌が多く、一般生活者の約2倍を保有している。またラグビー選手は菌の多様性が高い」と富士川氏。加えてストレスを受けると多様性が低くなるそうだ。アスリートを取ってみても、何らかの課題を持っている人は、食生活をケアしていない場合が多いそうだ。

こうした知見からアスリート菌ミックスを開発した。アスリート菌ミックスには多様な乳酸菌とビフィズス菌、酪酸菌、食物繊維とオリゴ糖など29種類が含まれている。すでにモニター調査も実施しており、アスリート菌ミックスを摂取した人の多様性指数が7.5%、酪酸菌が3.7%も向上したとのこと。腸内環境に確実にいい結果をもたらしていることがわかったのだ。

「これまで4年間アスリートに協力いただいて、一つの成果物にたどり着いたのがうれしい。来年以降もベースを整えながら、アスリートの課題を解決するような商品作りも予定している」と富士川氏は語る。

取材後記

発表会の質疑応答では「ターゲットとしているのは満員電車に乗っているビジネスアスリート。ハードな毎日を送っている人に呑んでもらいたい」と抱負を述べた鈴木氏。今後については「フードテック事業にも参入したい。飲料や健康サプリなど、さまざまな領域に進んでいきたい」とも話す。今後第2弾、第3弾と同社から発売される製品に着目していきたい。

※関連サイト:AuB https://aubstore.com/

(eiicon編集部)

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