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4月から始まる「オープンイノベーション促進税制」とは?大企業と中小・ベンチャー企業に与える影響

4月から始まる「オープンイノベーション促進税制」とは?大企業と中小・ベンチャー企業に与える影響

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2020年与党税制改正大綱には新たに「オープンイノベーション促進税制(以下OI促進税制)」が創設され、大企業とベンチャー企業の協業を促す税制優遇が盛り込まれました。

設立10年未満で未上場のベンチャー企業に対し大企業が1億円以上の出資をすると、25%の所得控除となり、税負担を軽くするというものです。

OI促進税制を活用することで、どういったプレイヤーがどのようにメリットを受けることができるのでしょうか。また、OI促進税制を創設した経済産業省の背景・狙いは何なのか、解説していきます。

大企業がため込んだお金をキャッシュアウトを促す狙い

今回、経済産業省がOI促進税制に踏み切った理由はいくつかありますが、大きい理由のひとつが大企業のキャッシュアウトを促す狙いです。

その背景として、大企業は収益が拡大しているにも関わらず、賃上げや投資に積極的ではない事が挙げられます。現に、2018年度の内部留保(利益剰余金)は金融業・保険業を除いて463兆円と、7年連続で過去最大にのぼっています。

要するに、企業の現預金が増えている一方で、そのキャッシュがイノベーションを起こすポテンシャルを持つスタートアップに流れていないことを経済産業省は課題視しているのです。

国内企業の自前主義を脱却しオープンイノベーション促進

OI促進税制を実施するもうひとつの背景に「国内企業の自前主義」の課題があります。経済産業省が公開したデータでは、「オープンイノベーションの実施率」が欧米企業が78%なのに対して、日本企業は47%にとどまっています。

さらに、オープンイノベーションのパートナーについてのアンケートの解答を見ると、「起業家・スタートアップ企業」をパートナーに選ぶのは欧米企業では一般的であるのに対して、日本企業にとってはほとんど選択肢に含まれていない現状があります。

出典:令和2年度(2020年度) 経済産業関係 税制改正について

大企業の投資額を欧米並に

日本の事業会社やCVCのベンチャーへの出資額は増加傾向にありますが、世界と比較するとまだ不十分であると言えます。特に、ベンチャー出資が盛んな米国と比較すると投資額は1/3程度にとどまっています。

出典:令和2年度(2020年度) 経済産業関係 税制改正について

事業会社・CVCの1件あたりの投資額に目を向けてみると、中央値で5000万円前後となっています。経済産業省はユニコーン、またはユニコーンと同等のベンチャー企業を2023年までに20社創出することを目標にしているため、5000万円という金額は「お試し」とも取れる規模です。

出典:令和2年度(2020年度) 経済産業関係 税制改正について

ベンチャーに対する本気度や貢献度が高くなければユニコーン創出は現実的ではないため、OI促進税制では「出資額1億円以上」というハードルを設ける形となっています。

また、海外のベンチャー企業への出資も5億円以上であれば税制優遇の対象となります。

中小企業のベンチャー出資の効果を最大化

OI促進税制の対象となるのは大企業だけでなく中小企業も含まれます。中小企業において、自社の経営資源の不足を外部リソースで補うことはメリットがあります。

「中小企業の成長に向けた事業戦略等に関する調査」では、中小企業が外部リソースの活用により得られた効果として63%が「必要な技術・ノウハウや人材の補完」と応えるなど、効果が発揮されているのです。特に、革新的な技術を持つベンチャー企業とのオープンイノベーションは双方にとって重要と言えます。

出典:令和2年度(2020年度) 経済産業関係 税制改正について

しかし、中小企業のベンチャー投資金額の1件あたりの中央値は675万円で、1000万円以下に集中しているのが現状です。ベンチャー企業との製品の共同開発にかかる金額は最低1000万円程度、共同での事業の立ち上げには数千万円~1億円かかるとされており、金額不足が否めないのが現状と言えます。

そのため、OI促進税制では中小企業による1000万円以上のベンチャー企業への出資を対象にして税制優遇します。

国内の「オープンイノベーション文化」の起爆剤となるか

企業がオープンイノベーション促進税制を導入することで、ベンチャー企業にチャンスが巡ってくるのはもちろんのこと、大企業や中小企業にも新たな選択肢が提示されることになります。

本文でも触れたように「お試し」の投資では成果は出にくく、プロジェクトは中途半端に終わり、大企業も再び出資することを渋ってしまいかねません。

その点では、経済産業省がしっかりと成果を出すための基準として「大企業による1億円以上の出資」そして「中小企業による1000万円以上の出資」というハードルを設けたことは、日本でオープンイノベーション文化が浸透する起爆剤となるかもしれません。OI促進税制を利用し、実りのある共創が生まれることを期待したいですね。

(eiicon編集部)

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