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「オープンイノベーション促進税制」のガイドライン公開!対象法人など要点を解説

「オープンイノベーション促進税制」のガイドライン公開!対象法人など要点を解説

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2020年与党税制改正大綱に新たに創設された「オープンイノベーション促進税制(以下OI促進税制)」のガイドラインが5月25日、経済産業省のホームページにて公開されました。

前回の記事ではOI促進税制の概要をお伝えしましたが、本記事では実際にどのような企業が要件に該当するのか、どのように手続きすればよいか、といったディテールをガイドラインからピックアップして紹介します。それほど複雑な内容ではありませんので、OI促進税制に関心があるならばチェックしておいて損はありません。

関連記事:4月から始まる「オープンイノベーション促進税制」とは?大企業と中小・ベンチャー企業に与える影響

【おさらい】オープンイノベーション促進税制の概要

はじめにOI促進税制とはなんなのか、おさらいしておきます。

まず、OI促進税制はいくつかの課題を解決するために創設されています。ひとつは「大企業がため込んだお金をキャッシュアウトを促す狙い」です。大企業は収益を拡大していても賃上げや投資にキャッシュがまわっておらず溜め込んでしまっています。

2018年度の内部留保(利益剰余金)は金融業・保険業を除いて463兆円と、7年連続で過去最大にのぼっていることからも、大企業の溜め込んだお金をキャッシュアウトさせること重要になることがわかります。

次に、「国内企業の自前主義」の課題があります。経済産業省が公開したデータでは、「オープンイノベーションの実施率」が欧米企業が78%なのに対して、日本企業は47%にとどまっています。

出典:令和2年度(2020年度) 経済産業関係 税制改正について

経産省はOI促進税制によってオープンイノベーションの実施率を欧米並みに引き上げたい狙いがあるのです。

最後に「中小企業のベンチャー出資の効果を最大化」することもOI促進税制の目的となっています。中小企業のベンチャー投資は中央値675万円と低く、イノベーションを起こすには金額不足です。そこを活性化させることもイノベーションの土壌を整備するためには必要なのです。

以上がザックリとしたOI促進税制の概要となります。

関連リンク:オープンイノベーション促進税制 の利用を検討されている 事業者の皆様へ

関連リンク:オープンイノベーション促進税制 (METI・経済産業省)

新たにガイドライン策定──対象企業の要件と手続きを明記

それでは、2020年5月に新たに策定されたOI促進税制の事業者向けガイドラインについて解説していきます。ガイドラインで記されているのは要件と手続きの方法です。

①対象法人の要件

出資側の対象法人要件は以下の通りです。

【対象法人の要件】

▶青色申告書提出法人であること

▶スタートアップ企業とのオープンイノベーションを目指していること

▶以下のいずれかの法人形態であること

 ・株式会社

 ・相互会社

 ・中小企業等協同組合

 ・農林中央金庫

 ・信用金庫及び信用金庫連合会

この条件に加えて、当然、対象法人が主体となるCVCも対象となっています。

【対象となるCVC】

上の対象法人が出資割合の過半数※を有する以下の組合

 1.投資事業有限責任組合(LPS)のうち

   a.対象法人の国内完全子会社が無限責任組合員(GP)であるもの

   b.対象法人が単独の有限責任組合員(LP)であるもの

 2.民法上の組合

※出資割合の計算に当たっては、対象法人が他のLPSを通じて行う当該CVCへの出資の金額は除外します。

ひとことでCVCと言っても、「対象法人の国内完全子会社が無限責任組合員(GP)であるもの」なのか「対象法人が単独の有限責任組合員(LP)であるもの」なのか「民法上の組合」なのかでOI促進税制の対象となる要件が変化します。自社がどこに当てはまるのか、ガイドラインとしっかり照らし合わせておきましょう。

なお、「中小企業の定義」についても、この章で言及されています。租税特別措置法で規定される「中小企業者」「中小連結法人」がOI促進税制においても中小企業の定義となります。具体的には以下に該当する法人“以外”の法人を指します。

1.大規模法人

 a.資本金の額又は出資金の額が1億円超の法人

 b.資本金の額又は出資金の額が5億円以上の法人等(大法人)の100%子法人

 c.100%グループ内の複数の大法人に発行済株式の全部を直接又は間接に保有されている法人

2.大規模法人のグループ法人

 a.同一の大規模法人が発行済株式又は出資の2分の1以上を所有している法人

 b.複数の大規模法人が発行済株式又は出資の3分の2以上を所有している法人

②スタートアップ企業の要件

①で紹介した対象法人・CVCの出資対象となるスタートアップは以下の9つの要件を満たすものとなっています。

1.株式会社

2.設立10年未満※1

3.未上場・未登録※2

4.既に事業を開始している

5.対象法人とのオープンイノベーションを行っている又は行う予定

6.一つの法人グループが株式の過半数を有していない

7.法人以外の者(LPS、民法上の組合、個人等)が3分の1超の株式を有している

8.風俗営業又は性風俗関連特殊営業※3を営む会社でない

9.暴力団員等※4が役員又は事業活動を支配する会社でない

<注意点>

※1 会社登記上の設立日を起算日とした出資日(現金の払込み日)までの年数により判定します。

※2 金融商品取引所に上場されている株式又は店頭売買有価証券登録原簿に登録されている株式の発行者である会社以外の会社をいいます。

※3 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に規定する風俗営業・性風俗関連特殊営業をいいます。

※4 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律に規定する暴力団員及び暴力団員でなくなった日から5年未満の者をいいます。

なお、経済産業省が個別にスタートアップ企業を認定することはありません。

特に注意が必要なのは6と7です。OI促進税制や、多くの出資を受けていないスタートアップを支援する狙いがありますから、すでに多くの出資を受けている場合、対象外となるケースがあります。

出典:オープンイノベーション促進税制 の利用を検討されている 事業者の皆様へ

出典:オープンイノベーション促進税制 の利用を検討されている 事業者の皆様へ

③出資の要件

出資側企業、出資される側企業の対象要件をクリアしたら、最後は出資要件をクリアする必要があります。出資要件は以下の通りです。

1.資本金の増加を伴う現金による出資であること

2.1件あたり1億円以上の出資であること

 ※対象法人が中小企業の場合:1,000万円以上スタートアップ企業が海外法人の場合:一律5億円以上

3.オープンイノベーションに向けた取組の一環で行われる出資であること

4.取得株式の5年以上の保有を予定していること

5.純出資等を目的とする出資ではないこと

なお、1件あたりの上限額は25億円、かつ一事業年度内あたり125億円までとなっています。

この要件だと、金額によっては株式の50%を超える取得となってM&A扱いになる場合がありますが、これも対象となります。ただし、すでに株式保有50%を超えている場合の追加出資は対象外です。

出典:オープンイノベーション促進税制 の利用を検討されている 事業者の皆様へ

また、出資要件の章では「オープンイノベーション要件」も定められています。出資することで、ちゃんとオープンイノベーションを目指しているかどうかも審査されます。オープンイノベーション要件は以下の通りです。

1.対象法人が、高い生産性が見込まれる事業または新たな事業の開拓を目指した事業活動を行うこと

2.1の事業活動において活用するスタートアップ企業の経営資源が、対象法人にとって不足するもの、かつ革新的なものであること

3.1の事業活動の実施にあたり、対象法人からスタートアップ企業にも必要な協力を行い、その協力がスタートアップ企業の成長に貢献するものであること

これらのオープンイノベーション要件、かなりフワっとした印象だと感じるかもしれません。そのため、ガイドラインにも具体例がいくつも列挙されています。読んでみると何が対象で何が対象外なのかイメージが湧いてくるはずです。要するに、出資しても「いままでの事業の延長」だったり「出資と事業が関係ない」といった場合ではOI促進税制の対象として認められないのです。

④手続き

手続きをするためには、ここまで解説してきた①~③の要件が満たされていればOKです。

1.対象法人要件

2.スタートアップ企業要件

3.出資要件

を満たした、対象法人によるスタートアップ企業への出資については、その取得したスタートアップ企業の株式の取得価額の25%を、出資を行った年度の所得から控除(損金算入)することができます。

税制の適用を受けるための手続きフローは以下のチャートが完結にまとめています。

出典:オープンイノベーション促進税制 の利用を検討されている 事業者の皆様へ

提出書類については、原則として経済産業大臣の定める様式以上の書類は必要ありません。また所得控除を受けるために特別勘定を設ける方法により経理する必要があります。詳しい経理方法はガイドラインの32pで確認できます。

その他の注意事項としては、様々な事情から出資先でオープンイノベーションの継続が確認できなくなる場合には、速やかに経済産業省に連絡しなくてはなりません。例えば一部売却後に特別勘定の取崩しが行われる場合、一部売却後に特別勘定の取崩しが行われない場合などが該当します。

【編集後記】OI促進税制の経営者層への認知拡大が重要

出資をする側も出資を受ける側も、そもそもこのOI促進税制を知らなければ控除を受けることができません。そのため、制度自体が広く認知される必要がありますが、やはりキモになるのは経営者層がこの制度を理解するかどうかです。

大企業で1億円以上、中小企業で1000万円以上というハードルがあるため、どうしても現場の社員の一存では決めきれないことが多くなるでしょう。

まずは現場の社員がOI促進税制を理解したうえで、OI実施に向けて経営者を説得できるかがキーと言えます。

(eiicon編集部)

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