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日本を代表する9社が参画!革命前夜ともいえる記者発表。電子国家エストニアの情報連携基盤を活用したスタートアップが仕掛ける革命とは?

日本を代表する9社が参画!革命前夜ともいえる記者発表。電子国家エストニアの情報連携基盤を活用したスタートアップが仕掛ける革命とは?

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5月9日、東京・虎ノ門ヒルズフォーラムにて開催されたPlanetwayの新事業発表会。

同社のプロジェクトには三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行のメガバンク3行、大日本印刷と凸版印刷といった競合関係にある企業各社が協業企業、あるいはパートナー企業として参加しており、発表会ではこれら大手企業9社の取締役級役員、さらにはエストニア共和国のIT・企業大臣であるUrve Palo氏も登壇するということで大きな話題を呼んだ。

大手メガバンク3行や印刷業界のトップ2社が一堂に会する様子は、単なるスタートアップの新事業発表会とは思えない「革命前夜」的な雰囲気すらあり、データを巡るコンペティター同士の争いに幕を引こうとしているPlanetwayが描く未来構想に、注目が集まった。

「データを個人の手に取り戻す」 Planetwayが描く未来とは

インターネットが普及してあらゆる情報が手に入る今、個人がインターネット上で検索・閲覧した情報や購買履歴が知らない間に他社の広告サービスで使われるということが当たり前のように起こっている。

もちろん、あらゆる企業が成長していくためにも、個人が便利な生活を享受するためにも、より効率的なデータの利活用が求められる世界になることは間違いない。しかし、未だに多くの企業がデータの利活用を上手く進めることができていない状況だ。

昨今、多くの企業でオープンイノベーションを推進する動きが活発化しているとはいえ、企業がデータを活用して外部と連携/協業できるような共通基盤が存在していないため、各企業は閉じられた環境下でサービス開発を行っている。また、昨今の相次ぐ情報漏洩事件や個人情報保護の制約も企業がデータの利活用に及び腰になっている要因のひとつだろう。加えて自社のユーザーを囲い込み、データを専有することで競合と勝負しようとする考え方も根強く残っている。その一方でグーグルやフェイスブック、アマゾン、アリババといった一部のテックジャイアントは、様々な手段で世界中の個人の情報・データを集めて平然とビジネスを行っている。

このようなグローバルな社会的/経済的課題に対して挑んでいるのが、Planetway Corporation(以下Planetway)だ。同社は電子行政先進国とされるエストニア共和国の情報連携基盤を世界で初めて民間企業向けにカスタマイズして提供する日本とエストニアのハイブリットカンパニー。

海外で宇宙工学とマーケティングの両方を学び、3度の起業経験と1度の清算経験持つCEO・平尾憲映氏率いるPlanetwayは、元・MySQL共同開発者であるトーニュ・サミュエル氏をCTOに、現・NATOサイバーテロ防衛センター シニアフェローであるヤーン・プリュッサル氏を取締役に、元・エストニア政府 経済通信省 局次長であるラウル・アリキヴィ氏を取締役に据えている。――このような盤石な経営体制を敷くPlanetwayが、新事業発表会を開催。冒頭の挨拶で平尾氏は「我々が目指す世界、それはデータの主権を個人に返していくことから始まる」と訴えたように、今回発表する新事業によって、データを取り巻く閉塞的かつ不自然な現状を変革しようとしているのだ。

▲Planetway Corporation 代表取締役 CEO/ファウンダー 平尾憲映氏

エストニア共和国 IT・企業大臣も注目する新事業

エストニアで研究開発を行い、日本で作った様々な事例をショーケースとして、アメリカからグローバルに発信していきたいというビジョンを持っているPlanetway。エストニア共和国のIT・企業大臣であるUrve Palo氏は、そうしたPlanetwayのビジョンに共感し、今回の発表会に登壇。「日本・エストニアは共に技術レベルが高いが、労働者人口の減少という共通の課題を抱えている。この現実に立ち向かうためには、イノベーションを続け、効率化を進めることが重要である」と語った。

▲エストニア共和国 IT・企業大臣 Urve Palo氏

毎年800年分の労働時間を削減したエストニアの情報連携基盤をカスタマイズ

今回Planetwayが発表した新事業は2つある。一つは企業や個人のデータ利活用を促す“攻め”の事業である「PlanetEco(プラネット・エコ)」、もう一つはサイバーセキュリティ人材を育成する“守り”の事業である「PlanetGuardians(プラネット・ガーディアンズ)」だ。

オープンイノベーションプラットフォーム事業である「PlanetEco(プラネット・エコ)」は、データ連携基盤「PlanetCross」と個人認証基盤「PlanetID」を共通基盤としており、複数の企業間でデータを連携させた新しいサービスを開発できるプラットフォームである。エストニアの政府ではこれらの基盤を使うことにより政府サービスの99%をオンライン化し、毎年800年分に相当する労働時間を削減したと言われている。

絶対的な自信を持つ、セキュアな基盤

Planetwayは2017年に福岡エリアにおいて、東京海上日動火災保険と共同で、九州の飯塚病院との間で、医療情報の連携を行うための「PlanetCross」の実証実験を行っており、従来1カ月以上かかっていた保険金の支払プロセスを数十分以内に短縮することに成功している。発表会に参加していた東京海上日動火災保険の常務取締役 稲葉氏も「専用線などを使うこともなく、極めて高いセキュリティを確保しながら簡単にデータのやり取りができることが分かり、非常に大きな成果が得られた」と語った。

Planetway のCTO トーニュ・サミュエル氏が「PlanetCrossの元となったエストニアのX-Roadは15年間セキュリティ問題を起こしていない」と語るように、発表会では極めてセキュアな基盤であることが説明された。データ改ざん防止、データの完全性、データのトレーサビリティという3つの思想を同時に実現しているほか、データに不正アクセスした人物を正確に把握できるため、従来のセキュリティで考えられているような問題は起こらないという。また、自分たちの技術力はトップクラスと誇る日本企業が多い現状において、トーニュCTOは、「ことサイバーセキュリティにおいては、日本は世界に比べてかなり遅れている」と指摘した。

▲Planetway Corporation CTO トーニュ・サミュエル氏

加えて、平尾氏は個人認証基盤である「PlanetID」については、個人の情報を第三者が得るためには、クローン人間を作って対象者の脳から情報を取り出さない限り不可能」と語るなど絶対的な自信を見せた。このように十分なセキュア環境を実現している「PlanetCross」と「PlanetID」だが、平尾氏は「個人が安心して情報を提供できる世の中を、100%テクノロジーだけで作り上げることはできない。問題が発生した際に個人情報を守っていく人材を育てていく必要がある」と語った。それがもう一つの新事業である「Planet Guardians」だ。2018年6月以降、ホワイトハッカーの教育・育成プログラムに関するPoCも進めていくとのことだ。

メガバンク3行など、日本の名だたる大企業が参加を表明

「PlanetEco」を活用することでセキュアかつスムーズに企業間のデータ連携を実現できるとなれば、企業の垣根を超えて様々なサービスが創出される可能性が生まれる。個人にとっても「どの会社にどこまでデータを提供するか」について主体的に選択でき、データを提供することによって手間のかかる契約書類の作成や申込手続きから解放される可能性がある。「PlanetEco」が軌道に乗れば、銀行や保険会社といった金融機関をはじめ医療、不動産、自動車など、個人にとって非常に重要性の高い個人情報を扱っている業界のビジネスフローやサービスそのものが根底から覆る可能性もある。

今回の発表会に参加しているPlanetwayの協業/パートナー企業は、その可能性にいち早く着目した企業群であると言えだろう。ここでは、発表会当日に登壇した協業/パートナー企業のコメントの一部を紹介する。いずれも日本を代表する大企業の取締役クラスであり、Planetwayの新事業に大きな期待を寄せていた。

■協業/パートナー企業 登壇者(登壇順)

・三井不動産株式会社 北原義一 代表取締役

・東京海上日動火災保険株式会社 稲葉茂 常務取締役

・アクセンチュア株式会社 江川昌史 代表取締役社長

・株式会社三菱UFJ銀行 林尚見 常務執行役員

・株式会社三井住友銀行 谷崎勝教 取締役兼専務執行役員

・株式会社みずほ銀行 大櫃直人 執行役員

・日本ユニシス株式会社 小西宏和 常務執行役員

・大日本印刷株式会社 蟇田栄 専務執行役員

・凸版印刷株式会社 麿秀晴 専務取締役

「現在のデジタル革命によって、個人の多様なニーズが顕在化し、社会がそれを受容できる世界となる可能性がある。そうした中でも個人の情報やデータがビッグデータサイエンスの奴隷になってはならない。インターネットを社会の公器に取り戻すと言ってはばからない平尾さんとPlanetwayには大きな魅力を感じている」(三井不動産/北原義一 代表取締役)

「福岡の実証実験では大きな成果が得られた。これからスタートする2つの新事業にも期待しているし、今回参加している企業の皆さんと協業、共創ができると思う。Planetwayとしっかり手を繋いで次の時代の新しいシステムを創っていきたい」(東京海上日動火災保険/稲葉茂 常務執行役)

「私たちはPlanetwayのサービスをインフラと考えている。当社はPlanetwayのセキュアなインフラの上にアプリを構築し、顧客のデジタルトランスフォーメーションを推進していく立場。今後、Planetwayと手を携えて日本社会のデジタル化を一歩でも先に進めていきたい」(アクセンチュア/江川昌史 代表取締役社長)

「私たち銀行業界はお客様の御資金を安全にお預かりすることに何年も心を砕いてきたが、結果としてお客様にご負担をかけてしまっていた。だからこそ、高い次元で個人の意思が反映され、さらに利便性と安全性を両立できる可能性があるPlanetwayとご一緒させていただきたいと考えた」(三菱UFJ銀行/林尚見 常務執行役員)

「データがあらゆる価値の源泉になることは疑いないが、最近では一部企業や国家によるデータの独占という課題が出てきている。これからは個人が自らのデータを自らの判断で企業に託し、託された企業が上手く利活用することで個人が便益を享受する世界観になると考えており、そうした世界観を実現するためのキーがPlanetwayの技術であると思っている」(三井住友銀行/谷崎勝教 取締役兼専務執行役員)

「スウェーデンはSwish(スマートフォン用の決済アプリケーション)によって貨幣から電子マネーに移行したが、Swishの開発運営を支えたのはコワーキングスペースから生まれたベンチャー企業。ベンチャーが一国の貨幣制度やライフスタイルを変える現代において、Planetwayは同様に世界を変える可能性を秘めている。世界を変える企業が目指すべき姿だと改めて認識した」(株式会社みずほ銀行/大櫃直人 執行役員)

「当社ではスマートタウンを事業の柱の一つにしようとしているが、IoT、AI、ロボティクスだけで実現できるとは思っていない。人と人が助け合う、利他の精神を喚起しながら進めていく必要があるが、そこで欠かせないのがセキュアな個人認証であり、セキュアなデータ連携であると考えている。そのためにもPlanetwayや本日集まっている企業の皆さんと密に連携し、人と街が助け合うような街づくりを進めていきたい」(日本ユニシス/小西宏和 常務執行役員)

「マイナンバー事業に携っている当社は以前からエストニアをウォッチしていたが、IT先進国で素晴らしいネットワークが構築されていると知った。日本でもマイナンバーが導入されれば非常に効率の良い社会が実現されると考えていたが、そうはなっていないのが現実。引越をするにも電気、ガス、病院、銀行など、一つ一つ手続きしなければならない状況は変わっていない。Planetwayの高い技術力、セキュアな環境のもとで個人が安心して情報を提供でき、企業として有用な情報を個人に返せるような世界を作っていきたい」(大日本印刷/蟇田栄 専務執行役員)

「情報を持っている生活者が発信元となり、最終的にその方がメリットを享受できることが本質だと語っていた平尾さんの話を聞き、この話に乗らないことのリスクのほうが大きいと感じた。同業界の方、コンペティターが同じ壇上にいるが、一社だけではミッションを達成できない。私たちが一緒になって知恵を出し合うことでプラットフォームとして仕上げていき、グローバルでも競争できる仕組にブラッシュアップしていきたい」(凸版印刷/麿秀晴 専務取締役)

日本だけでなく、世界の企業や個人を巻き込んで「革命」を起こしていく

オープン・イノベーションプラットフォーム事業である「PlanetEco」に関しては、発表会の当日よりパートナー企業の募集が開始された。Planetwayは「ヘルスケア・メディカル領域」「不動産・スマートシティ領域」「金融・フィンテック領域」「自動車・シェアリング領域」の4領域をコアテーマとし、これらのテーマ別に複数の企業による新たなサービス開発を目的としたオープン・イノベーション・プログラムを順次立ち上げていく予定だ。また、ユーザー企業だけでなく、コンサルティング会社やシステム・インテグレーターといったエコ・パートナー企業の参加も募っており、テーマ毎にエコ・パートナー企業のネットワークを通じて様々な企業の参加を呼びかけることで、社会課題を解決するようなデータ利活用によるイノベーションの創出を目指していくという。

そしてプレゼンテーションの最後に平尾氏は「我々はパートナー企業の皆さんと世界初の事例を連続的に創っていきたい。そして、データの主権を個人に返したい。そのためにも新しいインターネットの形をつくり、新しい資本主義社会を実現する必要がある。日本だけでなく、世界の企業、個人の皆さんを巻き込んで革命を起こしていく」と高らかに宣言した。

取材後記

発表会に参加した協業/パートナー企業の一社である三井不動産の代表取締役 北原義一氏が「オープンイノベーション、オープンコラボレーションなど、オープンという言葉が流行っているが、日本はまだまだクローズドな社会。本日ここに集まっている皆さんが、新しい次の世代、その次の世代に向けて、一緒に行動するときが来た」と語っていた通り、Planetwayが手がける「PlanetEco」によって、スムーズに進んでいるとは言い難い日本のオープンイノベーションを取り巻く現状を大きく変える可能性がある。当日登壇した9社以外にも、Planetwayの技術に着目し、活用を見込んでいる企業やすでに取引関係にある企業も会場には多く参加していた。現在および将来においてPlanetwayと協業する日本企業はもちろん、グローバル企業も参加する、地球規模のオープンイノベーションの担い手となることも期待できる。

また、平尾氏や協業/パートナー企業の方々の発言からは、グーグルやフェイスブックが作ったインターネットの世界を変えていこうという熱意も十分に感じられた。Planetwayの今後の動向は、あらゆる業界の経営者、新規事業担当者にとって目の離せないものになりそうだ。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤直己、撮影:加藤武俊)

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