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【イベントレポート】 OKI・横田氏×国連・トゥーミー氏×JIN・西口氏 ビジネスを通じたSDGs達成のために必要なコトとは?

【イベントレポート】 OKI・横田氏×国連・トゥーミー氏×JIN・西口氏 ビジネスを通じたSDGs達成のために必要なコトとは?

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2015年に国連が採択した「SDGs(持続可能な開発目標)」を起点として、イノベーション創出に取り組んでいる沖電気工業株式会社(OKI)<※活動詳細はコチラから>。同社の執行役員 経営基盤本部長 兼 Chief Innovation Officer(CINO) 横田俊之氏は、7月4日(水)東京ミッドタウン日比谷BASE Qで開催されたイベント「SDGs Holistic Innovation Platform(SHIP)オープンフォーラム『持続可能な開発目標(SDGs)達成に向けた国連の最新動向~ビジネスを通じたSDGs達成に向けて~』」に登壇した。

 “2030年に向けた17の目標、169のターゲット”から構成されるSDGs。目標達成に向けた様々な取り組みが、公的機関のみならず民間企業によって世界中で行われている。そのような背景から、国連開発計画(UNDP)とJapan Innovation Network(JIN)は2016年、SDGsの達成をビジネスで目指すオープンイノベーション・プラットフォーム「SHIP(SDGs Holistic Innovation Platform)」を立ち上げた。

日本の民間企業、関係機関、世界のスタートアップハブなど多様なステークホルダーを巻きこんだグローバルなエコシステムを構成し、オープンイノベーションにより世界中の課題を解決するビジネスモデルの創出に挑んでいる。

その「SHIP」が開催した本フォーラム。――国連本部からSDGsアクションキャンペーン グローバルディレクターのミッチェル・トゥーミー氏が来日し、国際社会におけるSDGsの最新動向について講演した。また、JIN専務理事 西口尚宏氏は、企業がイノベーションを通じてSDGs達成に貢献できることを論じ、OKIはその実例として、自社で行っているSDGs達成に向けたイノベーション戦略について紹介した。

会場には、ビジネスでSDGsの達成を目指している民間企業をはじめ、多様なセクターから100名以上が参加。登壇者と参加者を交えたディスカッションセッションも繰り広げられた。本記事ではイベント当日の模様を、順を追って詳細にレポートしていく。

SDGsは、大きなビジネスチャンスになり得る

●挨拶:国連開発計画(UNDP)駐日代表 近藤哲生氏 

開会の挨拶に立ったのは、UNDP駐日代表である近藤哲生氏。SDGsが採択されて3年が経ち、世界中の公的機関や民間企業に変化が起きている。今後、民間企業がSDGs達成に向けたビジネスをどう進めていくべきか、このフォーラムでぜひヒントを得て欲しいと述べた。

●講演:「SDGs達成に向けた国連の最新動向と民間セクターの貢献と可能性」

国連 SDGsアクションキャンペーン グローバルディレクター ミッチェル・トゥーミー

ニューヨークから来日した国連SDGアクションキャンペーン グローバルディレクターのミッチェル・トゥーミー氏は、国際的なSDGsに関わる取り組みの動向を紹介。SDGsの達成にあたり、民間企業には1200兆円規模のビジネスチャンスがあること、3億8000万人もの雇用を生み出すという試算を提示した。そして、SDGsは日本にとっても遠い存在ではなく、ジェンダーや所得格差、気候変動など日本が抱える課題に直結していること、SDGsの達成には官民の連携によるイノベーションが不可欠であると語った。

さらに、SDGsを起点にビジネスを展開している民間企業は消費者に支持され、結果的にビジネスも成功していることを述べ、グローバルでの具体的な実例について紹介。SDGsの達成に向けたビジネスイノベーションは、民間企業が繁栄していくために有効な手立てであることを改めて強調した。

●講演:「SDGsはなぜビジネス機会か?」

一般社団法人Japan Innovation Network専務理事 西口尚宏

次に、JIN専務理事 西口尚宏氏が登壇。SDGsは2030年までに国際社会が達成しようと合意したゴールであり、イノベーションの入り口である「課題発見」に役立つ。ただし、現状と未来には大きなギャップがあり、達成のためにはODA(政府開発援助)などでは不可能だ。そこに、ビジネスチャンスがあると西口氏。民間企業が関与し、収益の上がるビジネスを立ち上げていくことが必須だと述べた。そして西口氏は、SDGsをブレークダウンし、公的セクターや民間セクターなど各セクターの役割分担とビジネス機会を明確にすることが重要だと語った。

2030年のSDGs達成に向けて、イノベーションを爆速で進めていくOKI

~講演:「SDGs達成に向けたイノベーション戦略とイノベーション創発の仕組み」~

沖電気工業株式会社 執行役員 経営基盤本部長 兼 Chief Innovation Officer(CINO) 横田俊之氏

SDGs達成をビジネスの目標に据えイノベーションを創出している民間企業として、OKI・横田氏が登壇。本年1月にトムソンロイターの「世界のテクノロジー・リーダー100社」に選ばれるなど、イノベーション力が評価されているが、持続的な発展のため改革に取り組んでいることを紹介。SDGsに掲げられている社会課題解決をイノベーション創出の中心に据える体制を築いていった経緯を語った。

また、今年度スタートしたイノベーション創出活動「Yume Pro」で、1年間で10社と共創合意し、少なくとも1つの成功事例を作るという目標を紹介。7月末に行うイスラエルのデジタルヘルスセミナーの例を挙げながら、「イノベーションを行うならOKIと一緒に」というブランド構築活動を行っていくことを説明した。さらに経営層が先頭に立ち、今年度、社員1000人が参加するイノベーション研修、社長と若手社員が20回に亘り直接対話を行う「イノベーション・ダイアログ」など、社内文化改革のために実施している取り組みについても熱を込めて語った。

最後に横田氏は、こうしたイノベーション創出活動を社内だけの閉じたものとせず、対外的な情報発信にも力を入れていることを述べた。メディアを積極的に活用することは、社外への認知向上のみならず、社員への理解促進やモチベーションアップにつながる。2030年のSDGs達成に向けて、今後もイノベーションを爆速で進めていくと決意を新たに締めくくった。

SDGsを軸にパートナーを探し、ビジョンを同じくする相手と共創していく

~登壇者・参加者を含めたディスカッションセッション~

・国連 SDGsアクションキャンペーン グローバルディレクター ミッチェル・トゥーミー

・一般社団法人Japan Innovation Network専務理事 西口尚宏

沖電気工業株式会社 執行役員 経営基盤本部長 兼 Chief Innovation Officer(CINO) 横田俊之氏

講演を踏まえたディスカッションセッションは、西口氏がモデレーターとなり行われた。3人の登壇者、そして参加者同士も活発に意見を交わし、SDGsとビジネスについて関心の高さを感じさせた。

まず西口氏はトゥーミー氏に、OKI・横田氏のプレゼンテーションを聞いた感想を求めた。トゥーミー氏は、OKIがイノベーションについて社内のみならず社外に積極的に情報発信している姿勢を高く評価した。また、経営トップがイノベーション創出にコミットしていること、あらゆる職種・職階の社員と対話を行っていることも感心したという。現場の若手社員にアイデアを募ることは、閃きの源泉となるため、ぜひ取り組みを続けて欲しいと述べた。

「SDGsをイノベーションのゴールとして設定する前後で、OKIはどう変わったのか?」という西口氏からのこの問いに対して、横田氏は「以前は社内のベクトルがバラバラで、どこに向かっているのか分からず、暗中模索の状態だった。しかしSDGsを起点とすることで、目指す方向が明確となり、社内でベクトルを合わせられるようになり意思決定のスピードがあがった」と回答。トゥーミー氏も、「課題の特定に時間をかけすぎてしまうと、解決まで至らないことがある。その点、SDGsでは課題が既に列挙されているため、すぐに行動ができる」と語った。

会場では、参加者同士がSDGsの活用について積極的なディスカッションを行い、登壇者への質問も寄せられた。その中には「SDGsは1企業単位ではなく、企業同士が連携をして達成に向かっていくべきだ。まだ今の段階では、そうした動きが足りないと感じる」と、SDGsを活用したオープンイノベーションを待望する声も寄せられた。この意見に対して横田氏は、「OKIだけでイノベーションを起こそうとは、まったく思っていない。SDGsで掲げられた課題を解決するには、お互いの強みを持ち寄ったパートナーの存在が不可欠。SDGsを軸にパートナーを探し、ビジョンを同じくする相手と共創していく」と、Yume Proのロゴマークに込められた意味を説明しながら、改めてオープンイノベーションによってSDGs達成に邁進する強い意志を示した。

また、「自社の利益を追求してイノベーション活動に取り組んでいるのではない。勿論、利益も必要だが、社会課題解決に取り組んでいくための手段と位置づけている」との考え方を披露した。

SDGsについて議論する中で、利益主義だった社内の空気も変わってきたという。さらに、社会に価値あるものを提供し貢献するという原点に立ち返り、社会課題の解決に目を向けることの意識が根付きつつあると付け加えた。西口氏もSHIPの今後について、SDGsの啓蒙活動からビジネス実践へ舵を切ること、企業や団体を募り具体的なオープンイノベーションのプロジェクトをスタートさせると展望を語った。

●挨拶 :一般社団法人Japan Innovation Network代表理事 紺野登

最後に、JINの代表理事である紺野登氏から閉会の挨拶が行われた。「これからの時代、自社の利益だけを考える企業は繁栄しない。SDGsに代表されるような社会課題に目を向ける企業が繁栄していく。ぜひ、日本企業から世界に繁栄を」と呼びかけた。

取材後記

国連が掲げるような地球規模の課題は、民間企業の事業とはかけ離れた世界のように思える。しかしこのイベントで強調されていたのは、SDGsの達成には民間企業のイノベーション創出力こそが不可欠だと、国連が考えているということだ。西口氏の講演にもあったが、SDGsは狭義のCSRではなく、企業の事業活動で達成できるという意識が世界各国で広がっている。今後、OKIのようにSDGsをイノベーションの起点と捉える日本企業が、さらに増加していくだろう。

◆OKIのイノベーション創出活動についての詳細はコチラをご覧ください。

(構成:眞田幸剛、取材・文:佐藤瑞恵、撮影:佐々木智雅)

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