【連載/4コマ漫画コラム(42)】 共創パートナーと建設的な意思決定をするための ミーティング術
なんかうまくいかないのは
自社だけでなく、他社や大学やベンチャーなどと一緒になって進めていくのが共創であり、オープンイノベーションの基本です。
ところが、特に大企業とスタートアップがいざ共創を進めようとしても、打ち合わせそのものがスムーズにいかないことが多々あります。
その原因はカルチャーギャップ。
知らないうちに大企業やスタートアップの中での「それぞれの当たり前」が「カルチャー化」してしまっていて、同じ日本語を話していても「なんか話がかみ合わないんだよな」とか「あいつらと話していると通じているのかどうかわからない」とか「やたらストレスがたまるな」みたいなことになりがちです。
何がどうすれ違っているのかすら分からないから問題はなかなかやっかいです。
「いちいち」でいい
だから、「分かっているはずだ」を基軸にするのではなくて「分かっていないかもしれない」といつも考えるようにしてみましょう。
「そんないちいち全部のことを『分かっている?』って聞くのは失礼じゃないの?」と思われるかもしれませんが、それは話し方次第。上から目線で「分かっているのか?お前」みたいな発言は当然NGです。その代わりに「実はウチ(の会社)では、XXXというやり方をやっているのですが」という具合に、自らやっている「分かっているかもしれないけど、分かっていないかもしれないこと」をある時点までは「いちいち」説明することが大事です。
社内プロセスは言っちゃおう
ベンチャーが大企業と付き合うときに感じる大きなストレスは「やたら時間がかかること」です。「それでは社内の承認を得ましたらご連絡します」という言葉を最後にいつまでも何も言ってこない。これが最悪です。
ベンチャーから特に分かりにくいのは大企業の社内プロセス。誰がどう承認して、そのための手続きがどうなっていて、それにはどのくらい時間がかかるものなのか、などは、ベンチャーにしか勤めたことがない人にとっては摩訶不思議な世界なので、できるだけ具体的に説明しましょう。「そんな社内のプロセスを社外の人に話していいのか?」と思われるかもしれませんが、「話していけない理由」は実はほとんどありません(ありますか?社則とかに書いてある?(企業秘密の対象事項であることはまずないでしょう))
小分け納期宣言
できるだけ社内プロセスも説明した上で、「XXのステップをまず通過しなければならないので、その結果はX月X日までにお知らせします」と、自ら「いつまでに(納期)」をベンチャーに伝えましょう。そうすることで、大企業の人自身も自らを納期でしばり、その時までになんとか動かそうという努力につながります。
その「回答納期」は、小分けにしましょう。最長で1週間以内には何等かの返事ができるように社内プロセスを細分化して、その進捗をベンチャーに伝えるのが大事です。ずうっと長い時間待たせるのは「社内プロセス」がブラックボックス化してしまっていて、外から見たら何が起こっているのかがまったくわからない「ストレス蓄積」の原因になりますので。
Time is Moneyの実感の差
ベンチャーにとってはスピードは命です。投資をベンチャーキャピタルから受けても、そのお金は日々どんどん燃えてなくなっていきます(burn rateとはよく言ったものです)。大企業の人は、お金は(給料は別としても)自分とは関係ないところでなんとなく動いているという感じをどこかで持っています。「金がなくなったらおしまいじゃん!」というプレッシャーに日々さらされているベンチャーとの「時間の重要さ」に関する感覚差もギャップの大きな要因です。
また、ベンチャーの「時間」のマイルストーンは、次の投資の時期や、その投資を受けられるようにするための「プロトタイプの完成」「顧客の確保」などですが、大企業の大体は「年度」か「クオーター(三か月)」という固定化された区切りでしか考えていません(これも大きな問題)。
リスク回避の時間を削減
また、カルチャーとして大きな違いの一つは、「ベンチャーはリスクを取って進むもの」に対して、「大企業はリスクを回避することにエネルギーを使うもの」ということもあります。大企業はとかく多くの契約書やNDAや信用調査に時間を費やします。もちろん、それらはとても大事なことですが、いかに早くやるかを思いっきり工夫しないと、ベンチャーにストレスが溜まっていきます。「早くやる」ためには「なぜそれが今必要なのか」を一つ一つ考えて、いらないものはやらない(もしくは後回しする)ことが重要になります。「いつもやっているから」という思考停止はダメです。
ベースになるのは個人の信頼
具体的な活動に入る前にとても重要なのが、「なぜこのプロジェクトを進めたいのか」や「志」や「基本的な考え方」を双方でしっかり理解して納得することです(私の事例は第28回のコラム)。
これこそ「なんとなく分かっているはず」で放置されがちで、後々すれ違いの幅を大きくしていってしまう原因になります。
その際、単に「会社の方針だから」ではなく、大企業・ベンチャー双方の「個人」としての想いをベースとした話をしましょう。「会社のために」と言っているだけでは、結局は「会社のせい」にしやすくなるので。そうやって関係が構築されていけば、個人同士の信頼が醸成されて「すれ違い」は大幅に軽減されます。
まあ、実はそれほど心配したり肩に力を入れて頑張らなくても、結局は人間同士の話なので、「自分は会社の一部」なんて考えずに、相手(人間)のことをできるだけ理解しようとさえしていればなんとかなるものです(のでこのコラムはあまり意味がないかも(^o^;))。
■漫画・コラム/瀬川 秀樹
32年半リコーで勤めた後、新規事業のコンサルティングや若手育成などを行うCreable(クリエイブル)を設立。新エネルギーや技術開発を推進する国立研究開発法人「NEDO」などでメンターやゲストスピーカーを務めるなど、オープンイノベーションの先駆的存在として知られる。