ゴールドウインとスパイバー、新たな構造タンパク質素材を使用したウェアを発売
株式会社ゴールドウインと、Spiber(スパイバー)株式会社は、両社が2015 年から取り組んできた共同研究で開発した構造タンパク質素材を使った「Planetary Equilibrium Tee」を、ゴールドウインが展開するアウトドアブランド「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」から2019年8月下旬に発売する。
アパレル分野から地球規模の環境課題に挑むために始まった両社の共同研究開発では、構造タンパク質素材の実用化に向けた研究と製品の開発を進めてきた。微生物を使った発酵プロセスによってタンパク質を生成し、Spiber 独自の加工技術により繊維化、紡糸、製織、生地加工、ガーメント制作の各工程でのテストを繰り返してきた。その過程で量産化に向けた数々のノウハウと加工技術を確立。天然のクモの糸を模倣する技術から始まった研究開発は、現在ではより多様なタンパク質素材を作るフェーズに入っており、スポーツアパレルに求められる様々なニーズに合わせた、タンパク質素材の開発を進めている。
そしてこの度、両社のコラボレーションアイテムとして、研究開発の意義でもある地球規模の環境課題に対するメッセージを込め、構造タンパク質素材を使用したTシャツを「THE NORTH FACE」から発売する。
■「THE NORTH FACE Sp.」コラボレーションアイテム
Planetary Equilibrium Tee(プラネタリー・エクイリブリアム ティー)
人間の重量は、地球上に存在する生物全体の約 0.01%。そんな小さな存在が、地球環境に大きな影響を与えている。2018年、地球の生物圏におけるバイオマスの分布や、生物圏に対して人類が与えてきた影響について統合的に調査、分析した学術論文「The biomass distribution on Earth」が、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences U.S.A.)に発表された。
同論文のデータを読み解くと、地球全体のバイオマス重量の約82.5% を占めるのは一次生産者である植物であること、細菌(Bacteria)、菌類(Fungi)、古細菌(Archaea)、原生生物(Protists)を含む微生物(Microbes)が植物に次ぐ17%を占めること、動物はそれに対して0.5% と極めて少ない割合であること、人間は全体の0.01% 程度の存在にもかかわらず、人間と家畜を合わせた重量は野生動物全体の重量の 20 倍を超えること、などがわかる。このような学術研究に基づく新たな知見は、人間に多様な視点や学びを与えてくれる。
Planetary Equilibriumとは「地球の均衡」を意味する。現在の地球の状態だけでなく、原始から新たな均衡に向かって動的に変わり続けてきた歴史、それに人間が及ぼしてきた影響、この先自然と人間の関係性はどのように変化していくのか。この論文にインスパイアされ、Planetary Equilibrium Teeをデザインしたという。
■82.5 : 17.5
Planetary Equilibrium Tee は、植物由来のセルロースである「コットン」と、Spiber が生み出した微生物由来のプロテイン「Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)」でつくられた、未来のライフスタイルを想起させるTシャツ。地球のバランスを感じられるよう、それぞれの素材を82.5 : 17.5(※1)の割合で配合している。これは地球の植物と微生物が大半を占める地球のバランスを象徴すると同時に、動物に頼らないものづくりの可能性を示している。地球の生物圏で循環する基幹素材はセルロースとプロテイン。できる限り地球のバランスに寄り添うかたちで、一次生産者である植物とエネルギー効率の高い微生物から資源を生産する。これが両社が考えるひとつのビジョンという。
ボディに配置された「Nutrition Facts(栄養成分表示)」をモチーフにしたデザインは、生物圏において再資源化が可能であることを示唆している。ヘビーウエイトな生地でありながら、しっとりとした滑らかさが混在する独特で特徴的な質感は、Spiber が独自に開発した Brewed Protein(ブリュード・プロテイン)と上質なコットンを、生態系のバランスを参考にブレンドし、独自の加工を施すことにより実現したという。
※1)生態系バランスをベースに動物資源に頼らないという意図を込めた数値(%)。
※関連リンク:プレスリリース
(eiicon編集部)