事業承継のポイント
前回は事業撤退について解説しましたが、近年SEEDATAには事業承継に関するお悩みも多く寄せられるようになりました。そこで、今回はSEEDATAが事業承継をするパターンについて解説します。
SEEDATAの事業承継事例
【ある食品の定期配送サービスのケース】
この企業にはコアとなる数百人の顧客がいて、売り上げも1億程度あり、しっかりとした哲学もあります。しかし、その哲学に基づいて丁寧に事業を進めた結果、10年ほど赤字が続き、社長はM&Aで事業承継をしたいと考えています。(特定を防ぐために一部情報を変えています)
近年、ショップや、スモールな食品ビジネスなどをしている方で事業承継をしたいという人が増えているというトレンドがあります。
事業承継と聞くと、定年を考える社長が跡継ぎを探すためのもの思いがちですが、実は若い人の間でも増加しています。
まず、事業承継とひと言でいってもさまざまなパターンがありますが、SEEDATAが直接引き受けるのではなく、業務提携しているSD/Vでいったん引き受けるのが一般的です。
その場合、おもに以下の3つのケースがあります。
①PoCは終わり、サービスの形はある程度見えてきたが、PoBまでいかないパターン
②1~3年ほどやってみて、トントン、もしくは赤字でこれ以上続けるのはつらいというパターン
③黒字化していて、0→1のPoC、PoBまではできている状態。たとえば、1店舗目は出せたがこれ以上組織化し、2店舗目、3店舗目と広げていくのは難しいため引き継いでほしいというパターン
以上のどのパターンでも可能性はありますが、事業承継を考えている状態のとき散見されるのが、「誰かに引き継ぐつもりなので今はあまり力を入れていない」というパターンです。ECサイトであれば、「手放すつもりなのでSEOなどには力を入れず売り上げが下がっている」状態などをよくお見掛けしますが、これは大きな間違いです。
当然ですが、手を抜くことにとにより、この事業はさらに魅力のない状態になっています。
事業を承継したいのであれば、これまで以上に熱心に取り組み、これまでの集大成と呼ぶにふさわしいくらいの気持ちで取り組む必要があります。そうすることで、買い手側も事業をより魅力的に感じられますし、当該事業をもっと伸ばせるアイデアを持った買い手も現れてくれるでしょう。
事業承継の際にはPLなども当然重要ですが、事業をおこなっている本人が事業譲渡する前以上に熱心にその事業に取り組むというモチベーションがもっとも大事です。
事業承継の際にもっとも重要なノウハウの形式知化
実際の事業承継の交渉は、大手のM&Aの場合はさらにしっかりとおこなう必要がありますが、SD/Vの場合、相手が個人や起業家の場合が多いため、まずは以下のような顧客の情報を元にクイックに進めていきます。
たとえば、基本的な質問として、顧客が600人いたとして、
・毎月の新規顧客数
・顧客のリピート数
・リピーターの継続期間(平均〇カ月)
・リピーターの継続期間の最短と最長
・客単価
・人気の商品、人気のない商品
以上は最低限把握している必要があります。
それに加え、実際に自分がお客さんにインタビューしたことがあるのか、そこでどんな声があったのか、ないのであればインタビューしてみて初めて、「顧客を把握している」といえます。
プラス、個人でやっている場合は確定申告や、簡単な売り上げが分かるものが必要です。
さらに、SEEDATAが事業承継の際にいちばん大事にしているのは、その人が一生懸命作ってきたノウハウの形式知化です。
個人で事業をしている人にとっては意識せず暗黙知のうちにおこなっている行動を、ひとつひとつ自分で分解するのは至難の業です。そこでSD/Vが事業承継をする場合は、店舗オペレーションであれば、お店側とお客側の動きを30秒から1分単位で一挙手一投足を観察し、どんなオペレーションをしているのかを数日間かけて形式知化します。
その後にインタビューをおこなうことで、最初に聞いたときには出てこなかった、その事業を進めるうえでの重要なポイントが見えてきます。それはジョブの場合もあれば、ビジネスモデルの場合、IT化など技術開発の芽の場合もあります。
SEEDATAとSD/Vのインサイト能力を活用して、企業なり個人のビジネス活動を構造化し、短期間でノウハウ化することで、赤字を黒字化したり、新しいビジネスモデルを提案したり、スケールするためのマニュアル化など、個人では成しえなかったことが見えてきます。
本記事で紹介した内容は弊社blogでも詳しく解説していますが、近日発売予定の「コーポレートアントレプレナーバイブル」でさらに詳細に解説しています。新規事業推進でお悩みの担当者さまはぜひお手にとっていただければ幸いです。
語り:宮井 弘之。SEEDATA代表。
構成・文:松尾里美。SEEDATAエディター。
宮井 弘之株式会社SEEDATA
2002年、博報堂に新卒入社。情報システム部門に配属後、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ。新商品・新サービス・新事業の開発支援に携わり、2015年に社内ベンチャーであるSEEDATAを創業。 【株式会社SEEDATAについて】 2015年に博報堂DYグループ内に設立され、300を超えるプロジェクトでオリジナルの知見とネットワークを企業に展開。 “先進的な生活者群(=トライブ)の行動や発言に、隠された心理や価値観を発見することで、5年先の生活者ニーズを明らかにすること”を、ミッションに掲げる。主に「インテリジェンス事業」と「インキュベーション事業」の2つのアプローチで、クライアント企業のイノベーション支援を手がけている。
株式会社SEEDATA
代表取締役CEO