2020年新規事業プロジェクト大予想
今回は2020年の新規事業界全体が確実にこうなるであろうという私の予想を、キーワード順に解説していきます。
①一巡
まず、現状として、新規事業ブームの当初から取り組んできた企業も近年取り組み始めた企業も、なにか一度は行った(一巡した)状態です。
たとえば、予算をとってアクセラレータプログラムをしたり、アイディエーションをしたり、イベントを開いてどこかのと一緒におこなうなど、一巡した状態になり、多くの企業が「この後どうすべきか」と悩んでいるのです。
とくに、さまざまなプレイヤーと組んでみた人たちは「本当にこの組み方でいいのだろうか」という意識がとても強くなっているはずです。
そこで重要になってくるのが、どんなビジョンでどんなところと組んでいくかという、自社のオープンイノベーションシナリオです。新規事業やオープンイノベーションをおこなっている組織こそ、ビジョン、ミッションを見つめ直しつつ、次のチャレンジをしようというフェーズに入ってくるでしょう。
また、社内で新規事業コンテストやアクセラレータープログラムを何度も回してきた企業は、どんなビジョンでどのように組んでいくか、よりよい支援の方法についてなど、煮詰まってきています。
一方、新規事業の応募のプログラムをしている企業からは、ある程度アイデアは出たという実感はありつつも、やはり自分たちだけではやりきれないという声が多く寄せられます。
今後ますます、個別の具体的案件に伴走してほしいというニーズは高まっていきますし、PoC、PoBの概念も浸透してきているため、まさに実装、実行支援という部分に各社お金をかけ、PoBまでしっかりおこなってから会社設立という流れは進んでいくでしょう。
このあたりが、いわゆる新規事業部の人の2020年のテーマとなります。
②スモールM&A
スモールM&Aをオープンイノベーションで活用するという流れは今後確実に訪れると私は考えていますが、まず、多くの人が「絶対いける」と思うような著名なベンチャーは当然すでにお金も集まっているため、そこに新規で自分たちが入り込むのは困難です。
しかし、自分たちでゼロから立ち上げるとなると、われわれのようなビジネス・アクセラレーターの伴走がなければなかなかうまくいかないという現実があります。
そこで、0→1まではいっていないが、0→0.5や0.7くらいまで立ち上がりつつあったり、0→1まで立ち上げたが1→10までいかず、0.7くらいまで弱まってしまったような、とんとんから赤字、または開発は好きだが経営は好きではないから拡大しないという法人に注目しましょう。
そういったプレイヤーとの資本提携ないし買収を通じて新規事業にし、自社の技術を入れていくイメージです。スモールМ&Aからのオープンイノベーションや、スモールM&Aからの新規事業開発は2020年以降トレンドになるでしょう。
SEEDATAもすでに取り組んでいますし、それに伴い小規模M&AならではのPMI(Post Merger Integration=経営統合後に文化やビジョンを伝えて組織をならしていくプロセス)がますます求められていきます。
③D2C、DNVB
これまでも弊社blogでたびたび解説してきましたが、D2C、DNVBという流れはきています。
とくに製造業、FMGC(fast moving consumer goods=日用品)の新商品開発やブランディングは大概念としてのD2CやDNVBに吸収されていくのではないでしょうか。新しいDNVBやD2Cのビジネスモデルをともなった新商品開発が必須になってくるでしょう。
店販流通モデルの商品開発は粛々とやりながら、これからはDNVBの形で新商品開発を目指していくという流れが圧倒的に強まっていきますし、2020年のSEEDATAはこの時代の流れを先読みし、DNVBのプランニングから、受容性調査、運用体勢まで整えていきますので、極論はキャンペーンを一括発注するようなイメージでご依頼していただくことも可能です。
④不景気
②のスモールM&A、③のD2C、DNVBの流れとともに、海外に進出していくというトレンドがありますが、これらに影響を与えるマクロ要因は、「不景気」といえるでしょう。
景気の後退は感じている方とそうでない方といらっしゃると思いますが、景気がよい時代は資金にも余裕があるため、ゼロからチャレンジをしようという流れが強くありました。
一方不景気になり、先行きが不安になると、堅いところや確実なところにいこうという流れが強くなっていくため、商品開発に近いD2C、DNVBや、確実に実体があるスモールM&Aなど、ある程度確実な一歩を進めながらやっていく流れが訪れます。
また、国内の総需要はもう下がり続けるため、改めて海外での実入りを増加させる必要がありますが、海外でどのように新規事業やアライアンスをしていくかが重要になってきます。その際に役立つのが、SEEDATAが調査している海外のトライブたちです。海外で新規事業や商品開発を進めていく場合、とくにB2C、B2B2Cであればぜひご相談ください。純粋なB2Bは扱っておりません。
以上が日本国内の新規事業の大きな動きになります。
もうひとつ、これは2020年にSEEDATAが行おうとしていることになりますが、世界中のトライブの研究をしていると、やはり欧米圏のライフスタイルに先進性を感じます。
もちろんアジアも、中国を中心に面白い要素はありますが、欧米圏とアジア圏のビジネスデザインの違いを見ると「未来思考」ではなく「今思考」だということです。
そこで、2020年のSEEDATAはSD/SAを強化していきます。具体的には、東南アジアの大手企業に対し、「もっと未来思考でビジネスデザインをしていきましょう」という啓蒙活動に取り組みます。
そうすることで、すぐには無理でも、未来志向の東南アジア企業と未来志向の日本企業の現地でのオープンイノベーションが実現するでしょう。
今後景気が悪くなり、海外に進出しようというときに、海外の未来志向の企業と組める形を作っていきたいと考えています。
新規事業やオープンイノベーションをおこなっている人は、長期的には日本だけではなく、海外での活動に本腰を移す準備をしなくてはなりません。SEEDATAも2020年はバンコクを中心にアジアでの活動をおこなっていきますが、ニューヨークでの活動も強化し、SD/G(Global)に力を入れていくことで、日本で新規事業を進めている方々に役立つ知見を提供できると考えています。
本記事で紹介した内容は弊社blogでも詳しく解説しています。
また、発売中の『CORPORATE STARTUP BIBLE』では新規事業についてさらに詳細に解説していますので、新規事業推進でお悩みの担当者さまはぜひお手にとっていただければ幸いです。
語り:宮井 弘之。SEEDATA代表。
構成・文:松尾里美。SEEDATAエディター。
宮井 弘之株式会社SEEDATA
2002年、博報堂に新卒入社。情報システム部門に配属後、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ。新商品・新サービス・新事業の開発支援に携わり、2015年に社内ベンチャーであるSEEDATAを創業。 【株式会社SEEDATAについて】 2015年に博報堂DYグループ内に設立され、300を超えるプロジェクトでオリジナルの知見とネットワークを企業に展開。 “先進的な生活者群(=トライブ)の行動や発言に、隠された心理や価値観を発見することで、5年先の生活者ニーズを明らかにすること”を、ミッションに掲げる。主に「インテリジェンス事業」と「インキュベーション事業」の2つのアプローチで、クライアント企業のイノベーション支援を手がけている。
株式会社SEEDATA
代表取締役CEO