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日本におけるオープンイノベーションの課題とは?【前編】

日本におけるオープンイノベーションの課題とは?【前編】

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宮井 弘之

今回は、そもそもイノベーションとは何か、オープンイノベーションの成功事例、日本におけるオープンイノベーションの課題と展望について解説します。

技術主体のイノベーションから、より包括的なイノベーションへ

イノベーションとは狭義の意味では、「革新的な技術の登場のこと」と私は考えています。

たとえば、どうしても手ぶれを抑えられない状況下から、どんな状況でも手ぶれを起こさないものが登場してくるといった、技術的な革新をもって、今まで不可能だった事が可能になる、こういったものをイノベーションと呼んでいました。

一方、最近のイノベーションは技術のみではなく、より広く、ものの見方など、意味の発見によってそれを達成するものへと成り代わってきています。

また、オープンイノベーションはもともと米国発信で、日本においては2015年頃がオープンイノベーション元年でした。

オープンイノベーションというのは、もともと自分の会社の技術の公開をしたのちに、その情報を見た別の会社が「自社にはこういう技術があるので、こういった事ができる」といってコラボレーションを起こす、いわゆる技術ベースのマッチングというのが主流だったという事も抑えておく必要があります。

その後、技術だけでなく、ゼロワンブースターさんが行っている様な、いわゆるコーポレートアクセラレーターのようなオープンイノベーションの手法が勃興してきました。

具体的には技術に限らず、資金・営業網といったリソースを組み合わせながら、ベンチャー企業の理想を実現すべく、大企業がリソースを提供するといった様な形になってきたといえます。

この新しい形のオープンイノベーションは2016年、2017年に一気に日本に浸透しました。

つまり、オープンイノベーションもイノベーションと同様、技術に限らず、ビジネス創出の基盤を社内外に広く求めていくという流れになっています。

日本と海外のオープンイノベーションの違い

米国の場合、もともとオープンな文化だという事も相まって、イノベーションの普及と同様にオープンイノベーションもどんどん実践されてきましたが、日本は、これは私の経験からですが、技術の話をした時には必ずIPなどのいわゆる著作権や特許といった話が出てきます。「自社の技術をオープンにしよう」といっても、「新技術はまず特許に落とし込む」という文化の中では難しいのが現状です。

例えばSEEDATAが研究所同士を引き合わせても、様子見のままなかなか先に進みません。日本はもともとの技術ベースのオープンイノベーションは苦手でした。

一方、最近主流になってきている人材や営業網主体のオープンイノベーションに関しては、最初の一歩を踏み出す上で非常に日本に合っているのではないかと感じています。

これまでのように技術だけに焦点を当ててしまうと、提携するという最初の一歩が踏み出せなかったのが、例えば人材として「こんな研究者がいます」「こんな技術者がいます」という風に、最初は情報を広く公開し、提携した後でNDAを結んで、かつ資本提携したのちに技術の詳しい掛け算を行います。

日本は、入り口として旧イノベーション(技術主体のイノベーション)よりも現代のイノベーション(人材/営業網など主体のイノベーション)の方が得意な傾向にある、と言えるのではないでしょうか。

こういった流れの中で、最近は大手とスタートアップが組んで新規事業を行うといった事例が増えてきました。

しかし、意識の高い企業はすでに一通りコーポレートアクセラレータープログラムは行っています。

つまり、自社のリソースとのマッチングのフェーズまではもう漕ぎ付けることができているのですが、そこから具体的にどうやっていくのかという部分はまだ完成しきっていない状態です。マッチングの後うまくいっているところ、いないところが出てきているところが、今後の問題点としてあげられるのではないでしょうか。

大切なのはマッチングのその先

大切なのは『結び目』を見つける事です。リソース同士を組み合わせる連結部分をSEEDATAでは「結び目」という風に呼んでいますが、つまり、広く情報を公開してみたところ、いろいろな可能性が見えてきてしまい、どこで「結び目」を作ったら良いのかがぼやけているのです。

たしかに、技術だけ差し出すマッチングでは「結び目」は作りやすいのですが、日本ではそもそもマッチングがあまり起こらない。一方で、広くリソースを公開するやり方は「結び目」がわかりにくくなるが、マッチングは起こりやすいという問題があります。

「結び目がわかりにくくなる」というのは企業同士のやりたい事がズレる、という事などがおもにあげられます。なぜそういったことが起こるのか。例えば、大企業とベンチャー企業の文化ギャップによっても簡単にズレが生じてしまう事があります。

ところが、この文化ギャップというのは、第三者の目線でないと分からないものです。結び目に関してお互いのズレをwinwinになるように調節してくれる役が必要で、SEEDATAはこのあたりの仲人的な動きに注力することもあります。

また、スピード感の問題もあります。最初の段階、計画の段階だと大手企業はそんなにスピード感を持って進める事ができないため、スピード感のあるベンチャーとかみ合わなくなってしまうのです。(後編に続く)

オープンイノベーションやイノベーションについては、SEEDATAホームページにさらに詳しく掲載されています。

語り:宮井 弘之。SEEDATA代表。

構成・文:松尾里美。SEEDATAエディター。

宮井 弘之株式会社SEEDATA

2002年、博報堂に新卒入社。情報システム部門に配属後、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ。新商品・新サービス・新事業の開発支援に携わり、2015年に社内ベンチャーであるSEEDATAを創業。   【株式会社SEEDATAについて】 2015年に博報堂DYグループ内に設立され、300を超えるプロジェクトでオリジナルの知見とネットワークを企業に展開。 “先進的な生活者群(=トライブ)の行動や発言に、隠された心理や価値観を発見することで、5年先の生活者ニーズを明らかにすること”を、ミッションに掲げる。主に「インテリジェンス事業」と「インキュベーション事業」の2つのアプローチで、クライアント企業のイノベーション支援を手がけている。

株式会社SEEDATA

代表取締役CEO

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