オープンイノベーションに必要なオープンイノベーションシナリオとは?
前回は、オープンイノベーションを成功させるために必要なマッチング後の結び目の見つけ方についてお話をしましたが、結び目とは即ち、オープンイノベーションをどのような戦略でおこなっていくかということです。
戦略というと「この領域でやろう」「この中期経営戦略に沿っていこう」ということばかり語られがちですが、戦略とは、具体的なシナリオを持つことであり、具体的なシナリオなしにクリエィティビティは発揮できません。
このシナリオのメリットは、たとえば、一見関係ない会社だとしても、「自分たちのシナリオがこうだからこのような提案をしたらオープンイノベーションができるのではないか」という風に考えることができます。
つまり、まずは自社のオープンイノベーションシナリオを持っていなければ、オープンイノベーションは生まれないのです。SEEDATAでは、
シナリオを持つこと=オープンイノベーションの戦略を立てること
であると考えています。そこで今回は、このオープンイノベーションシナリオについて簡単に解説します。
オープンイノベーションシナリオは領域(カテゴリ)の問題と技術の問題に切り分ける
オープンイノベーション型の新規事業とは、3社以上のコラボによって新しい商品やサービスを実際に生み出し、PoC、PoB、PoCAをおこなっていく新規事業のことです。
オープンイノベーションを進める場合、当然さまざまな企業と組む必要があるため、コンサルタントからはピッチイベントの提案や、マッチングプラットフォームの提案を受けることが多いと思います。
こういった提案を受けたり、検討したりする前に、自社側で必ず用意しておく必要があるのが、今回ご紹介するオープンイノベーションシナリオです。
オープンイノベーションシナリオは、自分たちがどのような新規事業アイデアを受け入れ、どのような企業と組んでいくかを決める際に非常に役立つだけではなく、新規事業の立ち上げ時に自分たちの進めていきたい事業の領域を見定めるフレームワークとしても非常に有効です。
オープンイノベーションシナリオは、
①自社事業領域
②隣接領域
③OBゾーン
という3つの階層になっています。
自社のコアな業態に対して、どういう風に他社と組んで最終的につなげていくかを明確にすることが、オープンイノベーションシナリオの役割です。
どこまでがOBゾーンかを具体的な例を用いて決めておくのがオープンイノベーションシナリオの定義です。
我々がオープンイノベーションシナリオを作る際にもっとも気をつけているのは、組み先を選ぶ際、領域(カテゴリ)の問題と技術の問題に切り分けることなのです。
領域の問題だけで考えてしまうと、シナジーがないと思いがちでも、技術の部分にフォーカスしてみると、たとえば分析のアルゴリズムが応用できる可能性もあります。
当然逆のパターンもあり、技術は応用できないが、その領域のデータを自社の持つ技術で分析し直せば使えるということもあるでしょう。
大切なのは、常に領域と技術を分けて、どちらが関係あるのか、どちらも関係あるのかを見ながら、たとえば技術しかなければOBゾーンという風にあらかじめ分類しておくことです。そうすることで、技術の部分で組むのか、領域の部分で組めばいいのかが非常に分かりやすくなります。
また、オープンイノベーションシナリオを持つことで、社内で審査する際も「こういうシナジーがとれる」と発言しやすかったり、ピッチイベントなどに出たときにも技術的な質問をすることが可能になります。
オープンイノベーションやオープンイノベーションシナリオについては、SEEDATAホームページblogにさらに詳しく掲載されています。
語り:宮井 弘之。SEEDATA代表。
構成・文:松尾里美。SEEDATAエディター。
宮井 弘之株式会社SEEDATA
2002年、博報堂に新卒入社。情報システム部門に配属後、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ。新商品・新サービス・新事業の開発支援に携わり、2015年に社内ベンチャーであるSEEDATAを創業。 【株式会社SEEDATAについて】 2015年に博報堂DYグループ内に設立され、300を超えるプロジェクトでオリジナルの知見とネットワークを企業に展開。 “先進的な生活者群(=トライブ)の行動や発言に、隠された心理や価値観を発見することで、5年先の生活者ニーズを明らかにすること”を、ミッションに掲げる。主に「インテリジェンス事業」と「インキュベーション事業」の2つのアプローチで、クライアント企業のイノベーション支援を手がけている。
株式会社SEEDATA
代表取締役CEO