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経営者のDNAを受け継ぐAnyMind Group十河氏。約40億円の資金調達、アジア13支社への拡大。爆速成長の背景に迫る

経営者のDNAを受け継ぐAnyMind Group十河氏。約40億円の資金調達、アジア13支社への拡大。爆速成長の背景に迫る

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シンガポールに本拠地を置くグローバルカンパニー「AnyMind Group(エニーマインドグループ)」。アジアを舞台に広告、インフルエンサーマーケティング、人材の領域でテクノロジーを強みとしたSaaSソリューションを提供する同社は、2016年4月の創業より売上額も組織規模も異例のスピードで伸びている。

総額約40億円の資金調達(※)やM&A、大規模な組織改編を経て、現在、アジア11カ国に13支社を構え、社員数はすでに600人を超える。共同創業者 兼 CEOの十河(そごう)宏輔氏は、学生時代に海外を転々と旅するバックパッカーの経験を持ち、自身の肌で感じた海外、特にアジア人特有の商売センスや右肩上がりの市場の盛り上がりに魅了されたという。

多くの競合がひしめく広告やマーケティング業界で同社がこれほどまでに急拡大している理由は、どこにあるのか。これまでの経歴から、グローバルにおけるビジネス戦略・展望までをじっくりと伺った。

※2019年3月10日配信のプレスリリースより

■AnyMind Group CEO十河宏輔氏

テクノロジーを活用したSaaSソリューションを提供しているAnyMind GroupのCEO。 マイクロアドでのNo.1営業を経て新卒3年目にしてベトナム支社立ち上げに従事。その後もシンガポール法人立ち上げ、フィリピン法人、タイ法人、インドネシア法人、マレーシア法人立ち上げに参画し、2015年より史上最年少でマイクロアド本体の取締役に就任。 2016年4月にAdAsia Holdings Pte. Ltd を設立。 2018年1月にAdAsiaの親会社をAnyMind Groupとし、ネット広告に留まらず、インフルエンサーマーケティング、HR業界へとビジネスを拡大させている。

海外支社立ち上げ、取締役就任を経て、30歳手前で創業へ

――十河さんは、新卒でマーケティングプラットフォーム事業を展開する株式会社マイクロアドへ入社されています。なぜ、同社への入社を決意されたのでしょうか?

十河氏 : テクノロジーを使った広告ビジネスと海外展開に興味が強かったのが一番の理由です。当時はGoogleが圧倒的な検索エンジンのシェアを取り始め、日本に上陸してきたぐらいのタイミングで、Googleと同様のビジネスモデルを日本で先駆けて導入していたのがマイクロアドでした。その最先端のビジネスモデルに惹かれたのです。

さらに、そのビジネスモデルありきで海外展開ができる可能性があったこと。自分自身のキャリアパスを考えたときに、海外、かつインターネットの世界で勝負したいとの思いがあり、その点でマッチしたのが入社を決めた理由です。

――マイクロアドでは、数々の東南アジア支社の立ち上げを経験されていますよね。

十河氏 : 2年目までは東京本社で勤務し、3年目から海外に駐在して、ゼロからベトナム拠点の立ち上げを担当しました。10ヶ月ほどで順調に事業が回り始めたため、フィリピン、マレーシア、タイ、インドネシアなどの拠点立ち上げにも携わり、最終的には本社取締役として海外拠点をすべてカバーする職務を担いました。

――学生時代にバックパッカーのご経験があるそうですが、その頃から海外での事業展開を見据えていたのですか?

十河氏 : 僕は昔からインドへの強い憧れがあり、バックパッカー時代に長期間滞在していたんですが、そこで衝撃的なシーンを目の当たりにしたことで、より一層、海外で勝負したいとの思いが深まりました。

インドでは、10歳そこらの子供たちが僕らのような日本人学生に対して、ものすごい商売を仕掛けてくるんです(笑)。なんでもない土産物を巧みな話術を駆使してどうにか買わせようとする。値下げの駆け引きとかも本当に絶妙で、「それなら買ってみようかな」と思ってしまうほど。

こういうスキルが当たり前に身についていることもすごいし、アジア全体の人口が圧倒的に伸びていて、マーケットが開けているという利点も踏まえて、海外を舞台に事業展開をしたいと強く考えるようになりました。

――マイクロアドで6年ほどの勤務経験を経て起業されていますが、それは十河さんの起業計画に基づいた決断だったのでしょうか?

十河氏 : 厳密な計画があったわけではないんですが、実は両親ともに経営者の家系だったので、高校生ぐらいからずっと社長になりたいと思っていました。当時は、楽天、サイバーエージェント、ライブドアのようなIT企業が脚光を浴びていて、しかも、藤田晋さんや堀江貴文さんなど、若い方がトップに立っている。IT業界なら年齢関係なく勝負できるし、この領域にまちがいなく勝機があると感じていました。

ただ、これまでのような第1次世代のインターネット産業と同じことをするのではなく、何か自分の強みを作りたいとの思いがあり、マイクロアドで海外事業の実績を作り、ちょうど30歳を前にしたタイミングで起業しました。

ビジネスにおいて先行者メリットは絶対にあるし、海外で事業を起こすとしたら体力がある若いうちでないと厳しいので、「早く始めなければ」という焦りは常にあったのですが、前職でのポジションや実績も鑑みて、ちょうど良いタイミングだったのかもしれません。

グローバル組織のポテンシャルを発揮するチームマネジメント

――十河さんが2016年4月に起業したAnyMind Group(当時社名 AdAsia)は、本拠点をシンガポールに置いています。それは、どんな理由からでしょうか?

十河氏 : 最初から本気でグローバルで勝負したいと思っていたので、今後の展開を考えたときに条件がベストだったのがシンガポールでした。国のレギュレーションが整っていて、地理的にも都合が良い。

GoogleやFacebookのようなグローバル企業も、アジアのヘッドクオーターをシンガポールに置いていますし、シンガポールを軸にして、そこからグローバル展開を加速させるのがもっともスムーズだと考えました。

――立ち上げから3年半でアジア11のマーケットに13支社をオープンさせ、「Entertainment Tech」、「Marketing Tech」、「HR Tech」という事業の柱を作り、短期間で急成長されている印象があります。今日に至るまでに何かハードルはあったのでしょうか?

十河氏 : 急激に事業が伸びているのは事実で、その理由としては、伸びる市場、伸びる事業、最適なメンバーのすべてが最初からそろっていたことが挙げられると思います。ただ、事実ベースでは順風満帆に成長しているように見えても、組織が拡大するにつれて課題は生まれていました。

例えば、従業員が3人のときと、10人、100人、300人のときでは経営スタイルはまったく異なるわけで、組織規模が拡大するたびに壁がありました。組織が小さいうちは向かうべき方向性やマインドを当たり前のように共有できていたし、一人ひとりのパワーも最大化しやすい。それこそが小さな組織の強みであり、サービスローンチのタイミングでは重要なことでした。

しかし、500人以上の規模になると経営陣の考えを現場のメンバーにまで完全に浸透させるのが難しくなり、当事者意識が薄い人が増えてくる。彼らが周囲に良くない影響を与え始めたことで、さまざまな問題が浮き彫りになってきました。

その打開策として行ったのが、自分が本当に信頼できる人材を集めて、彼らを経営陣の分身としてメンバーとの関係性を築いてもらうこと。マネージャーレベルの採用や教育においては、マインドセットをしっかりと植え付けることを意識していて、徐々に組織が良い方向に変わりつつあります。

加えて、社内でのオープンなコミュニケーションも心がけています。毎月の全社会議を含め、戦略、事業提携、新規事業の情報なども社員に対してはできる限りオープンに流していて、会社がどんな方向に向かっているかを誰もが把握できるようにしています。こうすることで、自分の実務と会社が目指す方向性をリンクさせられるため、当事者意識が生まれやすくなります。

――各国で仲間を増やしたり、異なるDNAを持つ企業を買収されていたり、グローバル展開をする中で、文化的背景が異なるメンバーをマネージメントする難しさも感じられていますか?

十河氏 : おっしゃるとおり難しさを感じることも多々あります。それを克服するために意識している点でいうと、M&Aでは先方の社長としっかり信頼関係を結ぶこと。実際に、香港とタイの企業をM&Aした実績があるんですが、両創業者とも弊社の経営メンバーに入っており、経営層と方向性のすり合わせができていれば、その下の従業員たちも付いてくると思っています。

ローカルの従業員のマネージメントでは、職務内容を明確にして、かつ各々の職務内容が会社の方向性にどうリンクしているかをあわせて伝えることを意識しています。ビジネスにおいて、日本と諸外国の大きな違いを一つ挙げるとすれば、職務内容の取り決めだと思っていて、ふわっとした役割のもとフレキシブルに働く日本人に対して、外国ではカッチリやるべきことを決める文化があります。

ただ、職務内容を明確にするだけでは不十分だと思っていて、弊社では会社のビジョンと職務内容をリンクさせて、ローカルの従業員たちにも当事者意識を持ってもらえるよう配慮しています。要は日本企業の柔軟性と欧米系のドラスティックな縦割り社会の良さをいいとこどりしたスタイルですね。

国内外でのオープンイノベーションの事例も

――御社の事業では、各国の現地企業と共に新たなビジネスを仕掛けるなど、企業間の連携や共創が一つテーマになっていると思います。こういったオープンイノベーションを成功に導くコツはありますか?

十河氏 : 他社と協業して新規ビジネスに取り組む場合は、業界自体がどんな方向に向かっているのかという大枠を捉えることが重要だと思います。例えば、これから5G時代の到来によってIoTが発展すると、さまざまなデバイスがインターネットとつながり、野外広告もまちがいなくWEB広告に置き換わるはずです。

そうすると広告のクリエイティブをリアルタイムで自由に変えることができたり、ポスターを張り替える物理的な作業が不要になったりというメリットがあり、広告の在り方自体が変わっていく。そういったストーリーを踏まえたうえで、実現可能な実務レベルまで落とし込んで各企業さんとの連携を進めていくのは大事なポイントだと考えています。

▲AnyMind GroupがJR東日本と実証実験に取り組んだ「ダイナミック野外デジタル広告」(大宮駅/2018年)

――eiicon編集部では、JR東日本さんがスタートアップとの実証実験を実施する「STARTUP_STATION」を取材させていただき、そこでまさに御社の「ダイナミック屋外デジタル広告」を拝見しました。AI技術とカメラでの分析を取り入れた斬新な取り組みですね。

十河氏 : これは昨年のクリスマスシーズンに大宮駅で実証実験したものですね。この取り組みを今まさに、タイ・バンコクの主要な移動手段の一つであるBTS(スカイトレイン)の列車内と屋外広告で実験的に行っています。

これはデジタルサイネージを使った広告で、AI技術とカメラを使って性別・年齢層・表情によるお客様の流動分析の他、広告媒体の認知率調査も可能です。これにより、ロケ−ションやターゲットに合わせて最適化された広告配信につなげることができます。

十河氏が描く、これからの事業ビジョンとは?

――さまざま革新的な取り組みにチャレンジされている最中だと思いますが、見えている範囲で今後のビジョンをお伺いしたいです。

十河氏 : 広告事業ですと、現状はオフライン広告をオンライン広告に変えていく取り組みにビジネスチャンスを感じていて、その第一弾として今お伝えしたような野外広告や交通広告のデジタル化に注力しています。

インフルエンサーマーケティングの領域では、これまで「個人がメディアになる時代だよね」と言われていたと思うんですが、もうその時代は過ぎていて、今は個人がビジネスや経済を作っていく時代だと僕は思っています。

インフルエンサーの収益源が広告以外にも枝分かれしていき、例えばInstagram経由でプロデュースした商品を販売したり、オンラインサロンの会員を募ったり、あるいはビジネスに必要な資金をクラウドファンディングで集めたり、ビジネスのタッチポイントがどんどん広がっていくでしょう。その流れを踏まえてインフルエンサーとの強固なネットワークを構築し、レバレッジ効果を高めていきたいですね。

――御社では、プロサッカー選手の本田圭佑氏のSNS活動のサポート契約を締結されていたり、サニーサイドアップさんと共同創業した新会社AnyUpで、中田英寿氏がクリエイティブ・ディレクターに就任されたりといったニュースがありましたが、インフルエンサーはアスリートに焦点を絞っているのでしょうか?

十河氏 : 表面上はそのように見えるかもしれませんが、アスリートに特化しているわけではなくて、それ以外にも著名人のSNSタイアップが決定していて、年内に大きなリリースをいくつか予定しています。またタイやインドネシアでは、より大規模にインフルエンサーマーケティングを展開しています。

▲AnyMind Group×サニーサイドアップから生まれた新会社「AnyUp」が、中田英寿氏の公式YouTubeチャンネルを開設

――御社の核となる事業として、もう一つHR事業があると思いますが、この領域でのビジョンについても伺えますか?

十河氏 : 正直、HR事業は始めたばかりで規模は小さいのですが、人の流動性が高いアジアの市場を見たときに、潜在的なニーズは高いのではと感じています。採用、教育、評価までのHRのワンストップソリューションとして、データを細かく取り分析しています。多少時間はかかりますが、中長期的な目線で拡大を目論んでいます。

ここまで自分が思い描いていた以上に会社を急成長させることができていますが、まだまだ僕らの挑戦は始まったばかりです。最先端テクノロジーへの投資にコミットしながら、世界各国のプロフェッショナル人材の集合体という強みを生かして、さらなるインパクトを生み出していきます。

編集後記

ズバ抜けた経営センスとバイタリティの持ち主。それがインタビューを終えて抱いた十河氏の印象だった。長らく日本に固定の家を持たず、アジア各国を縦横無尽に飛び回り、わずか3年半で11カ国に進出。驚異的な成長スピードで各所から注目を浴びる同社が、次はどんなビッグニュースを届けてくれるのか。目が離せない存在になりそうだ。

(編集:眞田幸剛、取材・文:小林香織、撮影:古林洋平)

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