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新規事業を組織として進めるために必要な成功の循環モデル

新規事業を組織として進めるために必要な成功の循環モデル

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宮井 弘之

当ブログではこれまで、オープンイノベーションについてや大企業で組織として新規事業を進めていく際の組織の作り方などについて解説してきました。

以前、連続して成功している起業家たち(シリアルアントレプレナー)はどのようなものの考え方をしているのかについても触れましたが、今回はシリアルアントレプレナー的考え(シリアルアントレプレナーシップ)を組織として実行するために必要な「成功の循環モデル」について解説します。

組織を変えていくためににはOD(organization development)という概念が重要です。簡単にいうと組織風土をよくしたり、組織の機能を高めるための取り組みを総合的にODと呼びます。

ODはMIT元教授のダニエル・キム氏が研究し提唱した概念です。キム氏はシステム思考分野の研究者であり、彼が今まで見聞きしてきたり、実際にプロジェクトで関わったものをシステム思考のアプローチでコンセプチュアル(概念的)にまとめているのがこの成功の循環モデルです。

「成功の循環モデル」 出典: Daniel H. Kim (2002). Organizing for Learning, Singapore: Cobee Trading Company

図にあるとおり、組織をうまく動かすには、この成功の循環モデルというものを意識する必要があります。

新規事業というのは当然一人ではなく組織としてやっていかなければいけません。

モノの考え方(思考の質)が変わらなければ、モノゴトの捉え方や行動は変わることはありませんが、組織の中で一人だけ思考の質が変わっても、組織全体でモノの考え方を変えていかなければまったく意味がないため、シリアルアントレプレナーシップは組織として取り組むものと考えてください。

何故なら、行動はその場で指示をすれば変わりますが、その場合ずっと指示し続けなくてはいけません。だからこそ全員で一緒に考えてやっていくには、まず全員の思考の仕方を変えておく必要があるのです。

ただし、考え方を変えるというのは言うは易しですが、新規事業組織といっても、大学、年齢、やりたいこと、モチベーション、家族構成、給料など、さまざまなバックグラウンドを持った人間が集まっています。

では、どのように変えていくかというときに、まず関係の質を変えていきます。

関係の質とは「職場での会話量の多さ、お互いに協力し合う度合いなど、メンバーの関係や関わり合うときの雰囲気」と書いてありますが、これは人間関係の質がいいということの結果なんです。

まず関係の質をよくしていくのは難しいところですが、私がSEEDATAを経営してきた経験から言えることは2つです。

1.心理的安全性

上司や同僚などになにか提言したら聞いてもらえたり、思っていること悩んでいることを言っても大丈夫と思っている、つまり心理的安全性が担保されている関係性であれば会話が増え、関係の質はよくなっていきます。そのための取り組みはさまざまなものがあります。

2.プライベートも含めた人となりを知る

SEEDATAではよくペアインタビューを行いますが、人によって何でモチベーションが上がるかはかなり異なり、サークル活動など仕事以外の場面に表れることが多くあります。

「飲み会やってれば分かる」という人もいますが、飲み会では仕事とも自分のプライベートとも関係ないくだらない話をすることが多いため、「お互いの人となりを知る」という目的を持ったセッションが飲み会以外に必要です。

これをチームビルディングのワークショップと呼びますが、これは専門的にそうしようと思って高めていく必要があります。詳細は拙著「だから最強チームは「キャンプ」を使う。 ──「創造性」と「働きがい」を生み出すビジネス合宿術」に書かれていますので興味のある方は読んでみてください。

くれぐれも理解してほしいのは、行動の質を変えるためには、まずはチーム全員で思考の質を変えていかなければいけないということです。

そして、思考の質の改善を実践するためには、成功の循環モデルに則って、まずはチームビルディングをしっかりして、そのうえでチームの思考の質を変えていくというステップが必要です。

そこで初めて結果の質が変わり、結果が出るとまた関係の質がよくなり、関係の質がよくなると思考の質が上がり、行動の質が上がる……というよいサイクルが、ダニエル・キムが整理した成功の循環モデルなのです。

ODは国同士の関係改善や紛争解決など、先鋭的な利害解決に介入できるまで磨きこまれている分野であり、仮にチームが最悪な状態からでも必ず関係改善は可能です。

ただし、話し合いや対話はあくまで関係の質をよくするための手段のはずが、目的になってしまう可能性があるため、新規事業の場合はそこまで本格的にやる必要はなく、まずは作業興奮の原理で手を動かすことが重要です。

1カ月半~3か月くらいで思考の質はいったん終わりにして、行動の質に移しましょう。合宿でいえば終日1、2日で終わらせるべきです。

本記事で紹介した内容は弊社blogでも詳しく解説していますが、近日発売予定の「コーポレートアントレプレナーバイブル」でさらに詳細に解説しています。新規事業推進でお悩みの担当者さまはぜひお手にとっていただければ幸いです。

語り:宮井 弘之。SEEDATA代表。

構成・文:松尾里美。SEEDATAエディター。

宮井 弘之株式会社SEEDATA

2002年、博報堂に新卒入社。情報システム部門に配属後、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ。新商品・新サービス・新事業の開発支援に携わり、2015年に社内ベンチャーであるSEEDATAを創業。   【株式会社SEEDATAについて】 2015年に博報堂DYグループ内に設立され、300を超えるプロジェクトでオリジナルの知見とネットワークを企業に展開。 “先進的な生活者群(=トライブ)の行動や発言に、隠された心理や価値観を発見することで、5年先の生活者ニーズを明らかにすること”を、ミッションに掲げる。主に「インテリジェンス事業」と「インキュベーション事業」の2つのアプローチで、クライアント企業のイノベーション支援を手がけている。

株式会社SEEDATA

代表取締役CEO

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