創業50年の精密ねじ技術で挑む脱・下請け。アウバ工業が異業種共創で拓く「超精密加工」の未来
自動車業界が「100年に一度」と呼ばれる大変革期を迎える中、地方の部品メーカーにも大きな構造変化が迫られている。愛知県に本社を構えるアウバ工業株式会社は、創業50年にわたり自動車用の高強度・高精度ねじを製造してきた老舗メーカーだ。しかし、EV(電気自動車)化に伴う部品数の減少や市場構造の変化を見据え、同社は今、半世紀培ってきた「精密塑性加工技術」を武器に、自動車以外の新領域へ挑もうとしている。今回は2代目社長である会宇場一郎氏にインタビュー。同社が誇る圧倒的な加工技術の強みから、異業種パートナーと共に描く事業共創の展望、そして未来のパートナー企業へ向けた熱い想いを聞いた。

▲アウバ工業株式会社 代表取締役社長 会宇場 一郎 氏
1975年愛知県生まれ。大手機械メーカーのエンジニアを経て、2010年に父親が創業したアウバ工業株式会社へ入社。2018年より2代目代表取締役に就任。自社の精密鍛造技術を活かした新規事業開拓と、オープンイノベーション推進に注力している。
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※記事掲載期間:2026年9月1日〜9月30日
0.01ミリの精度に宿る職人技。創業50年で培ったアウバ工業の圧倒的技術力
ーーまずはじめに、アウバ工業株式会社の事業概要と、主力製品について教えていただけますでしょうか。
会宇場氏 : 当社は100%愛知県で生まれ育った、創業50年の自動車部品メーカーです。主にエンジン周りや足回りに使われる、極めて高い強度と精度が求められる「特殊自動車用ねじ(ファスニングパーツ)」の製造を手掛けています。
単にモノを締結するだけの市販のねじとは異なり、当社の製品は極限状態の振動や熱、圧力に耐えなければなりません。そのため、材料の選定から熱処理、表面処理、そして加工に至るまで、自動車メーカー様の厳しい要求水準をクリアする一貫生産体制を敷いています。月産で言えば数百万本規模の製造能力を有しており、これまで日本の自動車産業の安全と信頼を影から支え続けてきたという自負があります。
ーー半世紀にわたって大手自動車メーカーに選ばれ続けてきた「アウバ工業ならではの圧倒的な強み」とは何でしょうか。
会宇場氏 : 私たちの最大の強みは、「冷間鍛造(れいかんたんぞう)による難削材の超精密成形技術」です。通常、金属を複雑な形に加工する際は削ったり(切削)、加熱して柔らかくして固めたり(熱間鍛造)しますが、当社は常温の金属に千トン級の圧力をかけ、コンマ数秒で目的の形状に塑性変形させます。
この冷間鍛造のメリットは、材料の廃棄がほとんど出ない省資源性(歩留まりの高さ)と、切断加工を行わないため金属の繊維組織(ファイバーライン)がちぎれず、圧倒的な強度を出せる点にあります。
特に当社の技術が優れているのは、「0.01ミリ単位の寸法精度」を冷間鍛造だけで叩き出せる点です。本来なら削り加工を挟まなければ出ないような複雑かつ精密な形状を、金型設計とプレス技術だけで一発成形します。これにより、従来の切削加工と比べて生産スピードは数十倍になり、大幅なコストダウンと強度の両立を実現しています。50年かけて溜め込んだ金型設計のノウハウと、現場の職人の感覚値データが、他社には真似できないブラックボックス化された強みとなっています。

EV化の危機をチャンスに変える。私たちが求める「異業種の技術・アイデア」
ーー自動車業界は今、EV化やCASEなど大きな変革の波の中にあります。そうした中で、御社が持つ課題感や、共創によってどのような事業を創っていきたいかお聞かせください。
会宇場氏 : 正直に申し上げますと、非常に強い危機感を持っています。ガソリンエンジンからEVへシフトすると、自動車を構成する部品数は約3万点から2万点へ、約3分の1減少すると言われています。特に私たちが得意としてきたエンジン内部や吸排気系のねじは、EVには存在しません。既存の自動車ビジネスだけに依存していては、10年後、20年後に当社の技術や従業員の雇用を守り続けることは難しいでしょう。
しかし、これは決して悲観的な話ではありません。見方を変えれば、「自社の加工技術を自動車以外の成長産業に転用する最大のチャンス」だと捉えています。
私たちが目指しているのは、当社の「超精密冷間鍛造技術」と、他社の「先端技術や異分野のニーズ」を掛け合わせた新事業の創出です。例えば、現在需要が急増している「医療機器」「ロボット産業」「航空宇宙分野」「次世代エネルギー(水素・洋上風力など)」といった領域です。
ーー具体的には、どのような企業やパートナーと出会い、連携していきたいとお考えでしょうか。
会宇場氏 : 求めているパートナー像は大きく分けて3つあります。
1つ目は、「超小型・軽量かつ高強度な金属パーツ」を必要としているテック系スタートアップやプロダクトメーカー様です。医療用ロボットの関節パーツや、ドローン・空飛ぶクルマの超軽量フレーム接合部など、「これまで削り出しで作っていたが、コストが高すぎて量産化できない」「プレス加工では強度が足りない」とお悩みの企業様がいらっしゃれば、当社の技術で解決できる可能性が非常に高いです。
2つ目は、新しい素材(チタンやインコネルなどの難削材、ハイテン鋼など)の開発・研究を行っている素材メーカー様や大学機関です。新素材と当社の鍛造技術を組み合わせ、これまでにない極限環境用パーツを共同開発したいと考えています。
3つ目は、デザインや製品企画力を持つプロダクトデザイナーや事業開発パートナーです。私たちは「作る技術」には絶対の自信がありますが、「世の中にどんな潜在ニーズがあるかを発掘するマーケティング力やデザイン力」はまだまだ不足しています。「こんなものが作れたら面白いのではないか」というアイデアを持ち込んでいただければ、それを即座にプロトタイプ(試作)として形にする試作開発ラインをご提供します。

ものづくりの壁を共に超える。「試作・アイデア段階」から共創に挑戦する
ーー共創を進めるにあたり、「まだ具体化していない段階での相談」でも受け入れてもらえるのでしょうか。
会宇場氏 : もちろんです。スタートアップや新事業担当者の皆様とお話ししていると、「図面がまだ固まっていない」「ものづくりの専門用語がわからないから、町工場に相談しづらい」という声をよく耳にします。
私からお伝えしたいのは、「全く完成された図面がなくても構わない」ということです。「こういう機能を持ったパーツを作りたい」「軽量化したいが、強度が落ちて困っている」といった、課題やアイデアの段階でぜひ当社に声をかけていただきたいのです。
創業50年で培った当社のエンジニアチームが、お客様のイメージを「どうすれば現実的なコストとスケジュールで量産できるか」というプロセスの設計から泥臭く一緒に考えます。当社には、小回りの利く試作専用の設備と、長年培った金型設計の知見があります。アイデアを最速で「手で触れる形」にするスピード感には自信があります。
ーー老舗メーカーとしての「技術」とスタートアップの「アイデア」が融合した未来が楽しみですね。最後に、これから出会うパートナーへメッセージをお願いします。
会宇場氏 : 「町工場」という言葉には古めかしいイメージがあるかもしれませんが、今の私たちは未知の領域へ飛び出すスタートアップ精神に溢れています。自動車業界で揉まれてきた「品質・納期・コストに対する厳しい姿勢」をベースに、皆様の革新的なアイデアを「確かな形」にする最高のパートナーになれると信じています。
日本のものづくりは、まだまだ終わっていません。既存の業界の垣根を飛び越え、私たちの技術と皆様のアイデアで、世界を驚かせるような新しい製品を一緒に創り出しましょう。皆様からの熱いご提案を、心よりお待ちしております。

取材後記
「自動車部品メーカー」と聞くと、どこか堅実で保守的なイメージを抱く人も多いかもしれない。しかし、今回お話を伺ったアウバ工業の会宇場社長からは、老舗企業の変革にかける凄まじい熱量と、スタートアップにも負けない挑戦者精神が強く伝わってきた。半世紀かけて研ぎ澄まされた「0.01ミリの精度を叩き出す冷間鍛造技術」は、まさに日本の製造業が誇る宝だ。この本物の技術力と、異業種のアイデアや最先端テクノロジーが化学反応を起こしたとき、どんなプロダクトが誕生するのか。日本のものづくりの次代を切り拓く同社の挑戦から、今後も目が離せない。
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(取材・編集・撮影:TOMORUBA編集部)