新規事業アイデアの集め方【後編】~応募側の視点~
前回は新規事業でアイデアを集めるために、ビジネスコンテストのようなものを開催する側のポイントについて解説しましたが、今回はコンテストにチャレンジする側それぞれの視点からポイントを解説します。
応募する側の視点にも、起業家がパブリックなコンテストに応募する場合と、社員が社内のコンテストに応募する場合の2パターンがあるため、順に解説していきます。
起業家がパブリックなコンテストに応募する場合
まず、外部の起業家の場合ですが、今の日本のパブリックな応募システムは、支援の枠組みが揃っておらず、単なる営業になってしまいがちという懸念点があります。
「有名なメンターがつく」といっても、ただの客寄せパンダの場合もあれば、前向き精神論か、理由を教えてくれないダメだしばかりだったり、自社事業とのマッチングが悪いなど、その人物と事業の評価としっかり結びついた形で支援が行われているものが少ないのが現状です。
そのため、外部の起業家として応募する場合は、以下の2つのどちらかの目的と割り切って行いましょう。
①広報、広告
「共同で起業する仲間が見つけたい」「リソースを提供してもらいたい」など、自分をその会社や周囲の人に知ってもらうことを目的とする場合。
②営業
その会社やメンターに売り込むよい機会と考える場合。
パブリックなコンテストに多くを期待しても、残念ながら上記以外の目的ではあまりうまくいきません。賞金欲しさで行うという場合もありますが、資金が欲しい場合は普通に資金調達をすることをオススメします。
社員が社内のコンテストに応募する場合
では、社内起業の場合ですが、今回は社内起業経験者である私が「社内起業に応募するの際のコツ」について解説します。
①入社5年目以上であること
まず、応募の時期としては入社5年目以上であること。それより社歴の短い人の社内起業はオススメしません。なぜなら、まだ会社のことが完全には分かっておらず、仮に通っても立ち振る舞いが難しかったり、ネットワークが構築されていなかったりするため、それなら会社をやめて自分で起業したほうがよいでしょう。
5年以下の場合、会社のリソースをしっかり使いきれるまで到達していない人が多いのが実情です。選ぶ側へのアドバイスとしても、5年以下の人を選ぶと外部の起業家とさほど変わらないため、もう少し熟練してきた人を選ぶことをオススメします。
②個人の利潤より社会的なインパクトを求めている場合
もうひとつは、「億万長者になりたい」というような個人の利潤より、社会的なインパクトを求めている場合、社内起業をすることで大きなリソースを使えるので、自分の人生を豊かにできる可能性があります。
目先の大金を得ることよりも、人から必要とされて社会にインパクトを与えられるほうが自分の人生は幸せなのではないかと思う人は、ぜひ社内起業にチャレンジしてください。
ただ、このときに気を付けるべきことは、今の仕事が嫌で、逃げたい気持ちから社内起業するのでは絶対にうまくいきません。単なる逃避ではなく、現業に対する問題意識と、「こうすればもっとよくなるのではないか」という実務から生まれた深い思いがある人は、絶対社内起業でうまくいきます。
最近SEEDATAではこれをある種の「憤り」と呼んでいますが、現業の中では非常識とされている新しいトレンドやテクノロジーを「この波は絶対捉えなければいけない」と感じた場合、この問題意識が出てきたときが応募の適齢期です。
セルフチェックのポイントとしては、ある程度しっかり実務をつみ、細かい問題点や業界の構造の問題点が分かったら機が熟したといえるでしょう。
また、SEEDATAでは現在、社内起業、または個人で起業をしたい方に対してのメンタリングサービスも実施しています。社内起業の場合、一次を通るとリサーチ費用をもらえるので、個人的にSEEDATAに問合せいただくことも可能です。
ゼロから絶対に成功したい個人の起業家の方には、個人向けのコーチングサービスも10万円からご用意していますので、SEEDATAならびにSD/Vのナレッジをぜひご活用ください。
個人の起業家と社内起業家の違いについては、個人的には、独立して一人でやっていたらここまでのおもしろさはなかったと思います。今のSEEDATAは、もはや私ひとりではできないところまで拡大してきているため、おもしろさのレベルが違います。
個人で起業するか、社内起業を利用するかは、社会により大きなインパクトを与えたいかどうかです。逆にそこまでのモチベーションがなければ組織を率いるのは疲れるだけなので、ひとりでやるほうが向いているという人もいるでしょう。
本記事で紹介した内容は弊社blogでも詳しく解説していますが、近日発売予定の「コーポレートアントレプレナーバイブル」でさらに詳細に解説しています。新規事業推進でお悩みの担当者さまはぜひお手にとっていただければ幸いです。
語り:宮井 弘之。SEEDATA代表。
構成・文:松尾里美。SEEDATAエディター。
宮井 弘之株式会社SEEDATA
2002年、博報堂に新卒入社。情報システム部門に配属後、博報堂ブランドイノベーションデザイン局へ。新商品・新サービス・新事業の開発支援に携わり、2015年に社内ベンチャーであるSEEDATAを創業。 【株式会社SEEDATAについて】 2015年に博報堂DYグループ内に設立され、300を超えるプロジェクトでオリジナルの知見とネットワークを企業に展開。 “先進的な生活者群(=トライブ)の行動や発言に、隠された心理や価値観を発見することで、5年先の生活者ニーズを明らかにすること”を、ミッションに掲げる。主に「インテリジェンス事業」と「インキュベーション事業」の2つのアプローチで、クライアント企業のイノベーション支援を手がけている。
株式会社SEEDATA
代表取締役CEO